「チャブドメイン・カーネイジ」 #2

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(チャブドメイン・カーネイジ セクション2)
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「あれじゃ、誰も相撲を見なくなっちまう。そう思わないか?お客さん」いつのまにか奥から出て来ていたスキンヘッドのバーテンダーが、トレンチコートの男に声をかけた。「あいつは強すぎるよ。まるで……」カウンターから身を乗り出す。声をひそめる。「まるでニンジャだ」
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トレンチコートの男が身を固くした。スキンヘッドのバーテンダーは芝居がかった仕草でオジギした。クローム製のオジゾウ・ネックレスがチャリチャリと音を立てた。「ドーモ、ハジメマシテ、ニンジャスレイヤー=サン。ヒロ・マイニチです」
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「な……」トレンチコートの男は、アイサツ返しすら忘れる程の衝撃を受けたようだった。さもありなんである。「なんだと?」「気にすることはない。あんたの偽名はなんだったかね?忘れちまったもんで」マイニチ=サンはにやりと笑った。
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「驚くことはない。種明かしをすると、インターラプター=サンから伝書鳩を受け取ったのだ。彼があんたを襲う一時間前にな。あんたに情報をくれてやれと書かれていた。インターラプター=サンは死を覚悟していたのかもしれん」
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トレンチコートの男……ニンジャスレイヤーは、油断ならぬ視線をマイニチ=サンに向けた。「では、おれの目的もわかっているな」「勿論。安心するがいい、情報代はツケにしておいてやるさ、あんたの噂はおれのネットワークを通じてしばしば耳に入ってるからね、凄腕だってね……」
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「では、おれが今までどんな殺し方をしてきたか、知っているな。もったいつけるな。マイニチ=サン」「ぶ、物騒だぜ、お友だち……」マイニチ=サンはぶるぶると震えて見せた。それもまた芝居がかっている。
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マイニチ=サンはベストの内ポケットから、フィルム状の記憶素子を取り出した。「さほど困難なビズ(仕事)じゃなかったぜ。お友達……。ここにユカノ=サンの情報がある」そして、意味ありげに付け加えた。「あんたの望むものは、そこにあるかね……」
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ニンジャスレイヤーはマイニチ=サンの手から素子をひったくった。「どちらにせよ、真偽はすぐに確かめる。偽りならば……」「そこは信頼してくれていいぜ。俺はプロさ、 時間さえあれば、あんたと犬猿の仲のあのソウ…ソウ…ウ…ウ…」
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マイニチ=サンがブルブルと震え出した。「ウウバァーゴボボボ!」泡状のヨダレをゴボゴボと吹き出しながら、マイニチ=サンがいきなり拳銃を取り出しニンジャスレイヤーに向けた。「イヤーッ!」反射的にカウンターの上へジャンプしたニンジャスレイヤーが、マイニチ=サンの側頭部へ回し蹴りを放つ。
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「アバーッ!」マイニチ=サンのスキンヘッドの頭部が横なぎに吹き飛び、くるくると回転しながら宙を飛んだ。丸い頭はホールの片隅にある相撲スロット・マシンのレバーにぶつかり、極太ミンチョ体フォントが図柄となったドラムを回転させた。「お」「相」「撲」。
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「ひゃあ!やったあ!今日は朝からこの席をキープしてたんだぜ!」そのスロットマシンの席に陣取っていた中年男が楽観的な歓声をあげた。スロットマシンからは相撲コインが際限なく溢れ出してくる。「まったく生首サマサマだよ!これで三日分の負けがチャラ……ララー!」おお、見よ!
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その中年男もまた、マイニチ=サンのようにアブクを吹きながら、バネじかけのように席から立ち上がると、ぎこちない手つきで腰のピストルを抜き、ニンジャスレイヤーへ向けた。「イヤーッ!」「アバーッ!」脳天に、ニンジャスレイヤーの投げたスリケンが突き刺さった!
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今度はその相撲スロットの近くのテーブル席に座っていた三人のノミカイ・サラリマンである。それぞれの額にネクタイをしめたほろ酔いのサラリマンが、一斉にその手の吹き矢を構えた。「イヤーッ!」「アバーッ!」「アバーッ!」「アバーッ!」スリケンが、サラリマンの脳天に突き刺さった!
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「非常事態だ!」黒服が胸のIRCトランスミッターへ手を伸ばそうとするが、その手は急に震え出し、かわりに取ったのは拳銃だった。「連絡、くくく、く」「イヤーッ!」「アバーッ!」スリケンが、黒服の脳天に突き刺さった!
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今やホールの客と従業員すべてが、思い思いの武器を手にニンジャスレイヤーに狙いを定めていた。いや、ホールだけではない。上階のバルコニーで悠々とポン酒を飲んでいたカネモチ達も同様であった。機関銃を構えた老婆すらいる!
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集中砲火が始まった。スモトリをかたどった相撲ブランデーのボトルが、グラスが、相撲チョコの壺が、ガシャガシャと音を立て弾け飛ぶ。ニンジャスレイヤーは火線を避け、カウンターの反対側へ身を踊らせた。多勢に無勢!
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「フーム、フム、フム、フーン、フム」ニンジャスレイヤーを包囲する群衆の後方、ふんぞり返ってその地獄図を見守る者があった。薄紫の装束。ニンジャである。「噂通り、一筋縄ではいかぬか、ニンジャスレイヤー=サン。ロートルとはいえ、あのインターラプターを殺っただけのことはあるか」
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その背後に、ステルス装束の別のニンジャのシルエットが滲み出す。「初手はよし、だな。インフェクション=サン」「フム」「入念な準備もダイダロス=サンのハッキング技術あればこそ。奴にフーレイしておくか」「そうよのう、ヴィトリオール=サン。だがおぬしにも存分に働いてもらうぞ」「勿論だ」
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ステルス装束のニンジャ「ヴィトリオール」は静かに頷くと、再び闇の中へ戻って行った。「フーンフム、ホーム。次の一手と行こうか」インフェクションは一人呟いた。作戦名「チャブドメイン・ギャンビット」。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
作戦の取りかかりは情報屋ヒロ=マイニチ。彼の日頃の情報収集は、ソウカイ・シンジケートにツツヌケであった。彼は踏み込み過ぎた。そして虎の尾を踏んだのだ。ソウカイヤの情報ドメインを……もっと言うならば、電脳ニンジャ、ダイダロスが電子情報の海に撒き散らした電脳ブービートラップを。
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ユカノという女の居場所を探るマイニチ=サンの動きは、初めは見過ごされるべき小さな波紋に過ぎなかった。だが、インターラプターの死を手がかりに、やがてその動きはニンジャスレイヤーの存在と結びつけられる事となった。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
事が起こる6時間前に、既にダイダロスはニンジャスレイヤーが相撲バー「チャブ」へ訪れるであろう確定的な情報をつかんでいた。入念なニンジャブリーフィングを経て、この二人のニンジャ、インフェクションとヴィトリオールがチャブに派遣され、手ぐすね引いて待ち受けていたのである。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
インフェクションは左手のひらを上に向けた。おお、なんたる不気味!ニンジャ小手の隙間からインフェクションの手のひらに這い出てきた白い多足虫は、なんであるか!?これこそは彼が体内に飼う「コントロール・パラサイト・ムシ」である!
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
賢明なる一部の読者の皆さんは、その多足虫の謎めいた名称から答えを導き出していた事だろう。そう、現在このチャブの客と従業員すべてを支配下におき、操り人形がごとく自由自在に動かしているのは、一人一人の脊髄に潜り込んだこの悪魔的な虫型バイオ神経強制操作システムの働きによるのだった。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月6日
「チャブドメイン・カーネイジ」 #1 http://togetter.com/li/75756 「チャブドメイン・カーネイジ」 #3 http://togetter.com/li/75859
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