イラストレーター・中村佑介氏の『イラスト講座21』“絵のメリハリ”編(2015.03.07)

中村佑介のイラスト教室 @kazekissa02

【梨央Q&A⑮】先ほどと同じ丸を使うとこんな感じ。寒色（青系）の中の暖色（赤系）や、暖色の中の寒色は、例え同じような濃さの画面の中でも、差をつけてくれます。 pic.twitter.com/MzbGXDCqJq

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【梨央Q&A⑯】だけど背景も暖色よりだけど、ギリギリあじさいのイメージのある薄い赤紫。他の色も暖色といえど、赤までは使わず、中間色と呼ばれる黄色～緑、青緑によって、画面全体では雨のイメージがしっかりと保たれています。 pic.twitter.com/WI2rT6aJY4

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【梨央Q&A⑰】つまりこのように、【描き込み】と【色味】、２つのコントラストによって、今回の作品は、通常は目立たないはずの"中サイズ"の女の子が、きちんと"主役"になり得ていた訳です。先生おそれいった！！（笑）

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【梨央Q&A⑱】さてさて、良いところばかりを列挙していけば、他にもキリがないのですが、今回の彼女のQは「アドバイス」なので、ここからは「もう少しここをこうすれば良くなるんじゃないかなぁ」というAをしてゆきます。

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【梨央Q&A⑲】まずは構図について。この絵はアナログ制作なので、もしかしたらスキャンした時に切れてしまっただけかもしれませんが、足元が画面の下ギリギリすぎて「窮屈な印象」を与えるので、もう少し余裕を持たせてやると良いでしょう。 pic.twitter.com/Jlm3z1SjdS

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【梨央Q&A⑳】ま、やりすぎもガランと空いちゃうので、大体このくらい微妙に（左図）。どっちつかずなら、いっそのことトリミング（切る）してしまうという手もありますが（右図）、今回だと本の厚みが解らなくなるので、やはり前者が良いでしょう。 pic.twitter.com/nlmfhMaIiB

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【梨央Q&A21】次に表情。今回の絵のテーマは作者いわく「楽しい雨の日」で、色彩や賑やかなモチーフから、一見楽しそうなイメージは伝わりますが、表情だけ見ると、女の子もカタツムリもどちらも決して楽しそう、ではないんですよね。 pic.twitter.com/3KD3hFOm7P

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【梨央Q&A22】あまりに表情を変えると、雨のシンとした感じも消えてしまうので、両者とも、ほんの少しだけ嬉しそうにさせてみました。（変更点：目／口） pic.twitter.com/LFpY4gnPC4

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【梨央Q&A23】ただどちらも笑顔だと、画面が作者の価値観ばかりになり、僕ら見る側が感情移入できるスペースがなくなってしまうので、どちらか一方で良いと思います。

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【梨央Q&A24】すると「雨の日はイヤだねぇ（困り顔）」⇒「そんなことないよ、楽しいよ（笑顔）」という物語の流れだけでなく、描く側と見る側でのコミュニケーションが作品内に生れます。主役は女の子なのでやはり今回は左の方が良いでしょうね。 pic.twitter.com/MVDmtsFiZ3

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【梨央Q&A25】次は方向性。尻尾の向きを見ると、２つの雲が逆向きに進んでいます。「同じ空の雲は同じ方向に進む」という自然の摂理は抜きにしても、やはり絵の中で同じモチーフがバラバラに散って進むと、見る側の集中力も散ってしまいます。 pic.twitter.com/ZhugIyNH7t

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【梨央Q&A26】そして画面全体の方向性は主役も、カタツムリも、カタツムリの子供たちも【←】左に進んでいるので、後ろの雲はそれを強調する為にも、どちらも【→】右に進ませた方が良いでしょう。走る電車の景色は後ろに流れていく、寸法です。 pic.twitter.com/LnlLvQq0wr

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【梨央Q&A27】という訳で雲の進む方向を同じ向きに変えました。こうすることによって、主役たちの進んでいる方向（←）がより強調されるとともに、「雲が左→右に進んでやがて太陽を隠してしまった」という流れも出来て、一石二鳥です。 pic.twitter.com/CqC7nznNPp

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【梨央Q&A28】という訳で一旦ここで完成です。ここから先は「僕だったらこうする」というアレンジなので、予断として聞いて下さい。

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【梨央Q&A29】まずは絵に少し立体感と水の質感を持たせるため、画面上と同じピンク色だった画面下の地面は、少しだけ青のグラデーションを薄く入れてやります。 pic.twitter.com/7CMic1rEp6

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【梨央Q&A30】そしてもう少し「梅雨の時期」だけではなく「いま雨が降っている」ことをわかりやすくする為に、ポツポツと画面下に波紋を描き足します。 pic.twitter.com/2jYCntqucM

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【梨央Q&A31】最後は画面下が単なる"背景"や"地面"ではなく、"水たまり"であることを表す為に、水面に映る本の影をユラユラと入れます。すると主役がまるで「本の船」に乗っているような面白さも出て、本があることの意味も出てきます。 pic.twitter.com/gdHf9hHtwt

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【梨央Q&A32】最後の３つの追加点はあくまで余談でしたが、以上が梨央さんに対するアドバイスです。些細な変更で、『画面のまとまり』と『流れ』そして『ストーリー性』が増した事だと思います。 pic.twitter.com/3HZaeAwSqd

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【梨央Q&A33】とは言え、梨央さんの今回の作品は高校生や美大生が提出したといっても疑わないレベルの完成度ですので、もう本当に言いたいのはこの一言、「よくがんばりました」。と言うのも、梨央さんは現在行っているサイン会ツアーで、この作品の途中段階を持ってきてくれました。

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【梨央Q&A34】そしてそこから見違えるほど素晴らしい作品に仕上げました。最初別人かと思ったくらいです（笑）　更にそれをきちんと提出した。（←実はここが一番重要※）努力もガッツも持っています。イラストの技術を伸ばすのはセンスではなく、そこですから。

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【梨央Q&A35】また、今回の数々のアドバイスは提出された作品があまりに素晴らしかったので、こちらも「もっともっと」と欲張ってしまっただけですので、今は「？」と思う部分もあると思います。ですから、この中のどれかひとつから、ひとつずつ、好みでクリアして行って下さい。

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【梨央Q&A36】そして何かしらクリアできて再び疑問点が出れば、また作品を見せて下さい。鑑賞者としても楽しみですし、教育者としても梨央さんの独学に喜んで付き合いますとも。これからが楽しみな15歳です。

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【梨央Q&A37】なお、ここでのアドバイスは梨央さんだけに言っている訳ではありませんので、今回のことがまだクリア出来てない人は「僕も見て」「私の作品も」と焦らないように。じっくり今回の講座をかみ砕いてみて下さい。

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【梨央講座38】以上で梨央さんへの"Q&A"改め、"講座"を終わります。今日は熱が入り、遅くなってしまったので、残り２本はまた後日で、ここまでとします。ご清聴ありがとうございました。