「剣豪」「剣聖」という呼称の誕生について

優れた剣士に対して「剣豪」「剣聖」という呼称がごく当たり前のように使われていますが、ふと思い返してみると、近代以前の武道関連書で、そういう表現は見たことないなーと思ったので、調べてみました。 (※少し追記。今後も新情報がわかったら更新します)
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「剣豪」「剣聖」という呼称について
神無月久音 @k_hisane
そういや「剣聖」とか「剣豪」って肩書は、随分と色んなところで使われてますけど、実際のとこ、いつ頃から出始めたのかしらんと、ふと気になったり。少なくとも、近世の時点では使われてなかったんじゃなかろうかなーと。大体は「名人」「達者」「上手」辺りですし。
神無月久音 @k_hisane
ぱっとわかる範囲だと、直木三十五が「剣法の発達」の中で使ってるので、少なくとも昭和三年の時点で「剣聖」は存在してま砂。「剣豪」は流泉小史が「剣豪秘話」「剣豪異聞」などで独創したと言うのが本当なら、大正末から昭和初期の頃になるので、大体同時期というとこです喃。

【剣法の発達(「剣法夜話」内)】
http://yoshiok26.p1.bindsite.jp/bunken/cn14/pg488.html

神無月久音 @k_hisane
若干うろ覚えですが、明治期の本である「柳荒美談」や「柳生十兵衛旅日記」辺りだと「剣豪」や「剣聖」って表現はなかったかなーと。あと、昭和初期の著作でも「日本武術神妙記」辺りだとそれらの言葉は使われてなかったので、まだそこまで一般的じゃなかったのかしらんと。
神無月久音 @k_hisane
とはいえ、昭和6年からの直木三十五と菊池寛の宮本武蔵名人非名人論争でもこれらの言葉が使われてたり、直木が昭和9年に亡くなった時、東京朝日新聞での訃報に「優れた剣豪の悲壮な斬死にも似たる直木三十五の死」とあるので、割と早く定着したのかもです喃。
神無月久音 @k_hisane
あと、「剣豪」「剣聖」の言葉は、昭和10年連載開始の吉川英治「宮本武蔵」でも使われてるので、これも世間への定着に影響あるかもしれませんな。で、昭和17年に出た「千葉周作遺稿集」で「剣聖の家系」てな表現があったりするのを見ると、この頃には普通に使える言葉として定着したのかなと。
神無月久音 @k_hisane
「剣豪」「剣聖」が完全に定着した時期になると、「○○の剣聖」とか「剣聖○○先生」とかいう塩梅に、割と多様されるようになりま砂。やっぱ言葉の響きがいいからでしょうかね。個人的には、ふとこの言葉が頭をよぎったり。 pic.twitter.com/inKpQWUVNm
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ちていのき @baritsu
昭和2年には「剣豪悲節」「天下無双の剣豪」て映画があるみたいですね @k_hisane

【「剣豪悲節」-日活】
http://www.nikkatsu.com/movie/12529.html

【天下無双の剣豪】
http://www.jmdb.ne.jp/1927/bc005270.htm

神無月久音 @k_hisane
おお、ありがとうございます。しかし、映画の題になってたとなるなら、書籍以外のところでの広がりも考慮した方がよさそうです喃。 @baritsu 昭和2年には「剣豪悲節」「天下無双の剣豪」て映画があるみたいですね
神無月久音 @k_hisane
そういや男谷精一郎は「剣神」と称された、という話もありま砂。出典が思い出せんのですが、表現としては他にあんまり聞きませんし(創作関係だとありますが、それはまた別として)、さて、どれだったか。
ちていのき @baritsu
早稲田の演劇データベース見てたら1937年に浅草公園観音劇場で、剣客商売 武劇 剣豪荒木又右ヱ門 という3本をやってる。剣客商売という題があったのがちよっと発見。ちなみに武劇(たて)の作者は高野弘正
神無月久音 @k_hisane
中西派宗家というイメージからすると、意外にハイカラな感じです喃。自分で劇団を運営・主演したり、大菩薩峠の「音無しの構え」を考案したりとかいいますし。佐三郎先生に何も言われなかったのかしらん。@baritsu ちなみに武劇(たて)の作者は高野弘正
三増 紋右衛門(新春の御依頼お待ちしております! @mon_emon
講談なんかが一役買っているのではと愚考します_φ(・v・※){“剣豪”の件に限らず、武術に関する一般的イメージって、講談の影響が無視できませんし)。 twitter.com/k_hisane/statu…
神無月久音 @k_hisane
それはあるでしょうね。剣豪物の逸話って、探っていったらどうも講談が初出なんじゃないかってのが割とありますし。@mon_emon 講談なんかが一役買っているのではと愚考します_φ(・v・※){“剣豪”の件に限らず、武術に関する一般的イメージって、講談の影響が無視できませんし)
神無月久音 @k_hisane
とりあえず、後でまた調べ直してみましょうか喃。映画の題でも使われてるとなれば、講談や演劇辺りでもなんか出てきそうですし。ついでに近世の武術関係の伝書も見直してみようかしらん。
江戸時代~戦国後期の武道関連書を探ったところ…
神無月久音 @k_hisane
話を戻して、昨日書いた「剣豪」「剣聖」という呼称は、大正末期から昭和初期の頃に創作されたものであろう、という話に絡んで、じゃあ明治以前だとどうなのよ、ということで、とりあえず「撃剣叢談」と「本朝武芸小伝」をざっと読み返してみましたが、やっぱ「剣豪」「剣聖」って言葉は皆無で砂。
神無月久音 @k_hisane
で、代わりに出る表現は「名人」「上手」辺りが多いで砂。その他、「(その術が)精妙」という表現もありましたな。それ以外だと、沢庵和尚から宗矩に宛てた書状や徳川実紀での小野忠明への評価なんかで「達人」「達者」という言葉が使われてるのがあるくらいですか喃。
神無月久音 @k_hisane
あとは、呼称というより装飾語も含んだ表現もありますが、「天下一」「天下の重宝」「兵法天下無双」「刀術者之鳳」「剣術古今独歩」「剣術無双」「兵法家」「兵法仁」辺りとかですかね、目に付いた限りだと。大体、明治以前から戦国の頃に遡って出てくる「優れた剣士への呼称」はこの辺かなーと。
神無月久音 @k_hisane
あと、「剣豪」という言葉が流泉小史の造語というのが正しいとすると、彼が「文芸春秋」で「剣豪秘話」の連載を始めた時期がわかれば、「剣豪」という言葉の初出はそこになるのかなと。元は「騒人」(大正15年創刊)で別の連載してたのを止め、「文芸春秋」に移ったとあるので、昭和元年頃じゃろか…
石部統久 @mototchen
.@k_hisane 近代デジタルライブラリーです 剣聖 柳生十兵衛旅日記 : 浪花節 藤川友春 口演, 吉田松茵 速記 (博多成象堂, 大1 1912) kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid… 剣豪 1934 昭和9年kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…
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コメント

はるを待ちかねた人でなし @hallow_haruwo 2015年11月18日
ゲーム・漫画・ラノべ等での「勇者」の(今のニュアンスでの)定着の過程とか思い起こされる。いや、そっちの歴史もちゃんと知ってるわけではないけども。
ヨド @takuya_maiyuki 2015年11月18日
剣聖という言葉を初めて知ったのはFEだったなぁw
3mのパブリックエネミーちくわ @tikuwa_zero 2015年11月18日
ソードマスターって、そのまま「剣の達人」って意味だから、海外における剣豪や剣聖の当て字じゃないのかな?
京都ねこ@本クレクレ @nekodaisukimyaw 2015年11月18日
剣聖といえば上泉信綱を真っ先に思い浮かべるな… 関係ないが、剣聖ツバメの漫画はチャンピオンで刃牙道よりはるか前に宮本武蔵復活を扱った漫画。本命は佐々木小次郎で、沖田総司や土方歳三など様々な剣豪が復活してくる。 面白い漫画なのでお勧めです
球磨川 雪 @Sosogi_K 2015年11月18日
『ハイアラキ師匠しか思いつかなかった、普通の話ね。』
Maulwurf @a7m167509498 2015年11月18日
FSSが定着させた。ていうかあの作品、メジャーな日のあたる場所に出てこないのをいいことに、アイデアやコンセプトをパクられまくってる、
まさ影 @masaeiyamagata 2015年11月18日
「楽聖ベートーベン」みたいな呼び方もいつ頃始まったのか気になる
nekosencho @Neko_Sencho 2015年11月18日
酒豪とかもね。似たような表現は似たような時期に始まったと考えるほうが自然ではあるし
catspeeder @catspeeder 2015年11月18日
そういや槍聖とか銃聖とかはあんまり聞かないなあ。
kanata @kanata_onion 2015年11月18日
剣聖といえば雷神シド。
狼吼 @wolf_howling 2015年11月18日
上泉信綱は1696年の武功雑記http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/773077十七の五に「兵法つかひの上手」とある
愚者@新刊BOOTH通販開始 @fool_0 2015年11月18日
たまには剣聖カイエンのことも思い出してくだしあ。
狼吼 @wolf_howling 2015年11月18日
山本勘助は噛ませ犬扱いで甲陽軍鑑もdisられてるが。武功雑記で他の褒め方は1巻に「豪傑」とかhttp://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/773073
狼吼 @wolf_howling 2015年11月18日
荒木又右衛門は1678年の殺報転輪記で「剣術者」http://www.geocities.jp/yoshipy/kobunn/satsu/satsu_2.htm
うぺぽ @upepo2010 2015年11月18日
ハボリムでしょ得意技はペトロクラウドだけどw
張三李四 @tyousanrisi 2015年11月18日
元ネタというか発想の元は李白や杜甫の詩仙や詩聖なんだろうがな。
オブジェクト@図書館はいいぞ @oixi_soredeiino 2015年11月18日
宮元武蔵など史実の剣士を知る前に、カイエンやハイアラキで身についてしまったFSSの罪は重い
猫町 縞@牛歩 @Katzenauge2 2015年11月18日
ところで、途中でさらっと流されてしまっていたが『剣客』はいつ頃からなのだろう? そして、『剣客商売』といえば池波正太郎だと思っていたけれど、池波の『剣客商売』は1972年(昭和47年)連載開始だから、作者も全然違う脚本なんだろうな。
猫町 縞@牛歩 @Katzenauge2 2015年11月18日
元ネタは将棋の『棋聖』かなと思ってたけど、棋聖という言葉は意外に新しいのかな?
gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan 2015年11月19日
中国の漢詩人を「詩聖」「詩仙」「詩仏」などと色分けしたあの用法、影響を与えたんじゃないだろうかな。あれはあっちでもともと言われていたんだっけ。
gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan 2015年11月19日
こういうレトリックはやはり「講談」が生んだのでありましょうかね。
コカイン忍者 @ymskes 2015年11月19日
やっぱデイモス・ハイアラキとダグラス・カイエンのせいだよなと
たか橋 @taka_hashy 2015年11月19日
斧使いの出番はありますか?
ぢゃいける@厚真町 @jaikel 2015年11月20日
凱聖クールギン「呼んだ?」
NORt @NORt18953368 1月10日
詩聖とか碁聖とかの◯聖の系譜だと思いますが、剣の名人が剣◯と呼ばれなかったのは、「剣」が「詩」や「碁」のような一つの文化ジャンルとして見られてなかったのでは?明治に剣道が確立して、その後も生活の実用技術から離れて行った結果ではないでしょうか?
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