足立恒雄先生による「幾何学の公理系」と「数学基礎論」に関する連ツイまとめ
平行線公準を使うあたりから、線分とか角とか何でも使えるようになってごく普通の幾何の本になった。パッポスの定理やデザルグの定理はガキの頃に勉強したので、ここは飛ばす。座標系の導入が出来ることがユークリッド幾何と同値なことを証明して、第1部が終わりとなる。ここまでで172頁。
2016-03-10 11:46:06ユークリッド空間の直線は数直線と見なせる(順序体の構造を入れられる)のだが、可換法則ab=baを証明するのにパッポスの定理が使われる。よく知られていることとは言え、その証明を知ると何やら感激的である。ヒルベルトの難しい『幾何学基礎論』を全部読んだと思えば、なお感激的である。
2016-03-11 09:35:40シュワブホイザーが担当した第2部に私の知りたい完全性、決定可能性やモデルのことなどが述べられている。さてここからと坐り直したなのだが、16日に朝日カルチャーセンターがあるので、やむを得ずその準備に時間を半分割くことにした。
2016-03-10 11:50:47朝日カルチャーセンターでは(非)ユークリッド幾何の話をする。手始めに『原論』を読んでいる。『原論』の日本語訳は共立出版から出ており(『ユークリッド原論』:1971年)、また東大出版会から出版が進行中である(『エウクレイデス全集』全5巻)。
2016-03-10 11:58:03共立版は、池田美恵さんがほそぼそ翻訳していたのを、せっかくならと、中村幸四郎、伊東俊太郎、寺坂英孝という当時の日本を代表する数学史家が手伝って完成したもので、訳としては、英訳その他も十分斟酌されており、何の問題もない。その後の発展を踏まえて現在の『全集』が刊行されている。
2016-03-10 12:01:48数学をやっているというからには『原論』を書棚に備えておくのは常識と言うものだろう。もっとも真面目に読んだという人をその道の専門家以外には知らない。小林昭七『ユークリッド幾何から・・・』は第1巻の全48命題が 紹介されている珍しい本である。私も初めて読んだ。
2016-03-10 12:05:39小林さんの本では長さとか面積という言葉が自由に使われているが、元の『原論』ではそうした術語は使われない。合同という言葉もない。「2辺夾角が等しければ残りの辺や角も等しい」に相当する記述になっている。「二つの図形が等しい」というのは「それらの面積が等しい」ことを意味する。
2016-03-10 12:22:59平行線公準を使わないで「三角形の内角の和は2直角を超えない」という「サッケーリの定理」が証明できる。直線の長さが無限であることを認めればこの定理の証明は正しい。球面では直線の長さが有限なのでこの定理は成り立たない。面白い定理だから朝日カルチャーセンターではこの証明を紹介しよう。
2016-03-10 17:48:49基礎論に対する数学者の無理解
『幾何学の超数学的方法』の第1部を読み終えたところだが、ヒルベルトの『幾何学基礎論』と比較するとき、さすが1世紀が経過したんだと実感できる。ヒルベルトの本は公理化できたというだけのことで、これを使って(完全性などの)超数学的なことを証明しようとしても何の役にも立たない。
2016-03-10 20:44:31しかも『幾何学の超数学的方法』はヒルベルトよりはるかに簡潔に整理されている。タルスキ学派(なんてものがあるかどうか知らないが)の偉大な業績と言うことができるだろう。非ユークリッド幾何についても多々言及されているが、ちょっと覗いた範囲では、完全性は証明されていないように思える。
2016-03-11 07:09:45R.Hartshorneの"Geometry: Euclid and Beyond"(Springer UTM)は有名な本だが、71頁にこんなことが書いてある:この(ユークリッドの)公理系は完全か、すなわちそのすべてのモデルで真なる主張はこの公理系から証明できるか? (続く)
2016-03-11 09:44:06(承前)ゲーデルは合理的で十分豊富な公理系は完全であることはできないことを示した。」こんなレベルの人でもこの程度の理解なんだね。これには基礎論の人にも責任がある。「算術を含むほどに豊富な」と漫然と言えば、ユークリッド空間は先述のように算術を含んでいることになるではないか。(続く)
2016-03-11 09:47:43ゲーデルの不完全性定理はとても誤解されていると思う。漫然と含むのではなく「基本の言語で自然数が定義できなければらない」のである。たとえば集合論が自然数を含むというのは明らかなようだが、集合論の言語(∊と=)だけを使って「xは自然数である」という主張を定義するのは自明ではない。
2016-03-11 09:55:15つまり、ユークリッド空間で(その公理系から)自然数を定義することはできないので、不完全性定理を適用することはできないのである。数学基礎論の専門家はもう少し丁寧に説明すべきであるし、一般の数学者はもう少し基礎論の人の言葉に耳を傾けるべきである。
2016-03-11 10:00:10ハーツホーンほどの人がこんな間違いをして、そしてそれがきちんと指摘されないという事にロジックの人とその他の数学の人の隔絶の深刻さが端的に現れていると思います。本郷の図書館で初めてこの間違いを見つけた時は本当に驚いた記憶があります。 twitter.com/q_n_adachi/sta…
2016-03-12 18:14:16Robin HartshorneといってもあのHartshorneではないのではないかと私も思ったほどです。 twitter.com/PhlebotomeH/st…
2016-03-12 18:31:20でも大抵はCantor–Dedekind axiom(en.m.wikipedia.org/wiki/Cantor%E2…)を採用してると言っていいと思うけど twitter.com/q_n_adachi/sta…
2016-03-11 14:14:22切断を定義するのに集合を使うと2階論理になりますが、論理式で定義すると1階の範囲で済ませます。たとえば、ある集合Xの任意の部分集合を動くのと、論理式で定義されたXの部分集合を動くのでは全く違います。1階と2階の違いの基本常識です。 twitter.com/CharStream/sta…
2016-03-12 17:53:52自然数の集合Nの部分集合の全体の成す集合(Nの冪集合)は非可算だが、φを(+,・,≼,0, 1を使って書かれた)論理式として、{x ∊ N | φ(x)}という形の部分集合だけを考えれば、論理式の数は可算だから、その数は可算無限である。つまり式で定義できない集合がたくさんある。
2016-03-12 21:51:29このあたりから勉強して行けば、普通の数学の専攻者にとっても基礎論の理解は少し容易になる。私は基礎論は全くの素人で歳を取ってから勉強したので、何がわかり難いかは身を以て知っているつもり。私の書いた『フレーゲ、デデキント、ペアノを読む』を読んでもらうと、1階と2階の違いは分かる。
2016-03-12 21:59:35