憲法ってどんなもの? ―憲法・立憲主義を考える前提として知っておきたいこと

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行政法たん @admi_tan

そこで、どういうものが「憲法」と呼ばれているか一般的に言われていること(現実に存在する憲法を整理、分類する視点)の一端を知って、「この人の主張している憲法概念はどれに当たるんだろう?」っていう風に、世の中でいろいろ主張されている憲法概念を整理するひとつの材料にしてほしいな。

2016-05-14 22:16:18
行政法たん @admi_tan

さて、わたしは憲法のことを【国民が権力者に対し国民の自由と権利を保障させるために守らせるルール】だと言ったね。 この「憲法」っていうのは、厳密には近代立憲主義に基づく憲法、つまり「近代的意味の憲法」のことなんだ。

2016-05-14 22:19:18
行政法たん @admi_tan

憲法に携わる実務家や研究者が何の留保も付けず単に「憲法」について論じているとき、その「憲法」っていうのは、ほぼ確実に「近代的意味の憲法」であること(少なくとも、近代的意味の憲法がそこで論じられている「憲法」の重要な一内容として含まれること)を前提にして論じているはずだよ。

2016-05-14 22:21:11
行政法たん @admi_tan

「近代的意味の憲法」以外にどんな意味の憲法があるかっていうと、たとえば「固有の意味の憲法」がある。 「固有の意味の憲法」は【国家統治の基本となるルール】のこと。ここでいう国家は主権国家でなくてもいいし、ルールの内容が近代立憲主義に基づいていなくてもいいんだ。

2016-05-14 22:27:25
行政法たん @admi_tan

内容がどんなものでも、ある領域を統治する上で基本となるルールであれば、そのルールは「固有の意味の憲法」だって言える。 たとえば養老律令は近代立憲主義の考え方に基づくルールではないけど、制定当初は国家統治の基本となるルールだったろうから「固有の意味の憲法」だったって言えるだろうね。

2016-05-14 22:31:25
行政法たん @admi_tan

どんな時代のどんな国家にも備わっているのが「固有の意味の憲法」なんだ。対照的な言葉には「立憲的意味の憲法」がある。 【ある人々が権力者に対しその人々の自由と権利を保障させるため守らせているルール】があれば、それは立憲的意味の憲法だって言える。

2016-05-14 22:34:56
行政法たん @admi_tan

近代的意味の憲法と違っているのは、「ある人々」というのが権力者の統治している領民すべてを指すとは限らないこと。

2016-05-14 22:36:11
行政法たん @admi_tan

人間であれば誰でも個人として尊重されるって考え方(個人の尊重)が出てくる前にも、特定の人々(貴族など)の権利を保障するためにルールで権力者を縛るって発想はあったんだ。 この発想を中世立憲主義といって、この発想に基づくルール(たとえばマグナ・カルタ)も立憲的意味の憲法に含まれる。

2016-05-14 22:40:51
行政法たん @admi_tan

ここまで出てきたいろんな意味の憲法(固有の意味の憲法、立憲的意味の憲法、近代的意味の憲法)について、包含関係を図示しておこうか。 pic.twitter.com/YHLE4vPD51

2016-05-14 22:43:38
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行政法たん @admi_tan

現代では、近代立憲主義からさらに進んで、国家による権利侵害を抑えようとするだけでなく国家に積極的な権力行使をさせることによって権利を保障させようとしたり(たとえば社会保障制度の充実)、憲法が守られるようにするための制度を整えたりしている(たとえば違憲審査制度の構築)。

2016-05-14 22:50:04
行政法たん @admi_tan

近代と比べれば、現代の憲法にいろんな要素が付け加わっているのは確かだよ。 でも、憲法は【国民が権力者に対し国民(個人)の自由と権利を保障させるために守らせるルール】だっていう近代立憲主義の発想が一番重要な要素なのは今も変わらない。だから主に近代的意味の憲法についてつぶやいたんだ。

2016-05-14 22:52:19
行政法たん @admi_tan

ここまで述べた憲法の各概念を、図だけじゃなくて表にもまとめてみたよ。 pic.twitter.com/4JkFF6G9BO

2016-05-14 23:27:17
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(2)個人の尊重の意義

行政法たん @admi_tan

アンケートの答えが気になる人もいるだろうだからアンケートの意図を簡単に説明しておこうか。

2016-05-08 18:02:30
行政法たん @admi_tan

このアンケートは、わたしが重要だと思った憲法の条項を重要だと思ったほうから4つ挙げて、みんながどれを一番重要だとして回答するか見てみたいと思って聞いてみたものだよ。 「これが正解!」ってものは特に想定せず聞いてみたんだ。

2016-05-08 18:03:35
行政法たん @admi_tan

(ちなみに「この条文は挙げないの?」って反応を頂いたのが9条と25条だね。 平和主義と生存権の保障は個人の尊重を貫くのに必要なものだから(戦力不保持まで要求するかはさておき平和主義は必要)、9条や25条と13条とを比較すると13条のほうが比較的重要だと思って候補から外したんだ。)

2016-05-08 18:06:05
行政法たん @admi_tan

わたしが日本国憲法の中で一番重要だと思う条文は、個人の尊重の原理を定める13条だね。個人の尊重が憲法の定めているすべての価値の根源だと思うから。 この根源に渦を巻くようにしてつながっているのが、国民主権、基本的人権の永久不可侵性、憲法の最高法規性などの諸概念だと思うんだ。

2016-05-08 18:07:53
行政法たん @admi_tan

個人の尊重の原理は、いわば憲法の「根源の渦」だよ。 #これが言いたかった (わけがわからないよって人は気が向いたら「根源の渦」でグーグル検索してみてね。)

2016-05-08 18:08:49
行政法たん @admi_tan

憲法を定めて実現しようとする最終的な価値が「個人の尊重」だから、4つの条文からあえて1つを選ぶなら個人の尊重を定める13条が一番重要だって思うんだ。

2016-05-08 18:10:52
行政法たん @admi_tan

「どんな人でも人間でさえあれば個人として尊重される」っていう個人の尊重の原理(13条)を実現するために、憲法が最高法規だと規定し(98条1項)、人権保障を強固なものにした上で、最高法規でなければならない理由も明記した(97条)。そして個人を尊重する結果、主権も国民が担う(1条)。

2016-05-08 18:13:04
行政法たん @admi_tan

…っていうのが、4つの条文の関係をわたしなりに整理した結果かな。

2016-05-08 18:13:18
行政法たん @admi_tan

あと、特定の条文に規定されているわけじゃないから挙げてないけど、権力分立も重要だね。ひとつの機関が権力を集中して持っていたら、権力を制限するのにも限界が出てくるから。 権力を制限する仕組みのひとつとして複数の国家機関に権力を分け、互いに抑制させ合う…っていう権力分立は欠かせない。

2016-05-08 18:16:20
行政法たん @admi_tan

ちなみに個人の尊重は「自分勝手の尊重」までは意味しない。特定の人だけでなく個人みんなを等しく尊重するのが個人の尊重だね。 そうすると各個人の利害が衝突することも出てくるから、そこは憲法の規定から調整のための基準を立てた上で、権力者が制度を作ったり裁判所が裁定したりして調整をする。

2016-05-08 18:18:06
行政法たん @admi_tan

わたしだけ、あなただけではなく、わたしたちがそれぞれ個人として尊重されるって考え方が個人の尊重の原理なんだ。 "Non mihi, non tibi, sed nobis." (わたしのためでも、あなたのためでもなく、わたしたちのために。) だよ。 #これが言いたかった その2

2016-05-08 18:21:37
行政法たん @admi_tan

個人の尊重(13条)の重要性については、わたしと同じく13条が一番重要だとする民法くんがもっと詳しいことをつぶやいてくれているから、ぜひ参照してみてね。 twitter.com/civil_law1/sta…

2016-05-08 18:28:56
民法(親族相続)くん @civil_law1

一言で言ってしまえば、「人権保障という意味では個人の尊重を基調として考慮要素を拡大していくという源泉を見出だせば、日本国憲法を全文抹消してしまっても不文法として日本国憲法と同一のものが存立し続けていると扱うこともなお可能であり、あえて成文の中で最重要を選べば基調たる13条」だと。

2016-05-08 15:22:15
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