荒山徹「大東亜忍法帖」下巻（創土社）発売中止

アリラン太郎 @TArayama1961

こう返事しました。 「割愛箇所4ヶ所をご提示くださいましたが、『このエピローグ自身、練りに練られたもので、変更することが物語の根幹、魂にかかわることであることも重々承知しております』とまでご拝察くださった通り、小説家のわたしにとりまして、4ヶ所いずれも根幹、魂にかかわること

アリラン太郎 @TArayama1961

なのです。 何卒いまいちどお考えくださり、このままの形で下巻をお出しくださいますよう、心よりお願い申し上げるばかりです。どうぞ宜しくお願いいたします。匆々不一 ○○○○（版元社長社長の名前）様 平成28年10月18日（火曜） 荒山徹 拝」

アリラン太郎 @TArayama1961

以上の彼我2度のやりとりがあって「クトゥルー編んでる」さんからメールが来たのは10月24日のことでした。 「本日社長より、『どうしても折り合わないようだから、下巻は中止』との指示をうけました」 「本当に残念でなりません」 「今一度、なんとかお考えいただけないかと切に願う次第です」

アリラン太郎 @TArayama1961

その後の経過は、みなさんもご存知の通りです。原因は版元のチェックミスにあります。 「原稿を受け取ったのが6月。本来ならもっと早くにこのようなお願いをするべきであった」と版元社長が認めている通りです。そのミスのツケを、わたしに払わせようとした結果が、下巻発売中止を招いたのでした。

アリラン太郎 @TArayama1961

版元が早い段階でミスに気づき、修正ないし削除を打診していたら、やはり折り合わなかったと思うので、上巻の刊行もなく、わたしは別の出版社をさがすことになったでしょう。よくあることです。でも上巻を出しておきながら、手前勝手な理由で下巻を出さないなど、読者を愚弄するにもほどがあります。

アリラン太郎 @TArayama1961

にもかかわらず版元は「詳細につきましては来月の初め頃に会社のHPにてお知らせできると思います」などと嘯くのです。そんなことをされたら『大東亜忍法帖』は二度死ぬことになる。一度目は下巻刊行中止で、二度目はネタバレされることで。死んだ本を、どこの出版社が引き取ってくれるでしょう。

アリラン太郎 @TArayama1961

版元社長が訂正、削除を要求してきた理由、こればかりは『大東亜忍法帖』のオチに関するのことなので今はつまびらかにできませんが、要は社長個人の思想信条によるもののようです。事の本質を洞察して「思想リンチ」と的確に表現なさった津原泰水先生の慧眼には、感嘆の言葉もありません。 twitter.com/tsuharayasumi/…

津原泰水（やすみ） @tsuharayasumi

@normal_stress @TArayama1961 @akiko_m1 @uncle_dagon 問題無いです。ケースごとの次第はさておき、僕の考えを自己責任上表明したのみですし、フィクションの内容が意に沿わないから後半は出版しないだなんて、完全に思想リンチですから。

2016-11-22 23:34:13

アリラン太郎 @TArayama1961

「お忘れあるな、読者諸賢よ。この一巻が『クトゥルー・ミュトス・ファイルズ』に列せられてあることを」とあえて本文（上巻242ページ）に記した通り『大東亜忍法帖』こそはラヴクラフトを、クトゥルフ神話をずっと愛してきたわたしの思いが生み出したものです。その思いの所産、結実です。

アリラン太郎 @TArayama1961

「クトゥルー編んでる」さんによれば、版元社長はクトゥルーが嫌いだそうなので、クトゥルーや出版人としての倫理より、ご自身の思想信条を優先させた、というところなのでしょうか。いや、これはあくまで推測、愚行愚考の域を出ませんが。

アリラン太郎 @TArayama1961

なお、版元社長が修正、削除を求めた思想信条は、きわめて立派なものであり、尊重されるべきものであると承知しています。この点は明確にそう述べておきます。上巻刊行前であれば「わかりました。他の出版社で出してもらいます」と引き下がることができたと思うのです。残念でなりません。

アリラン太郎 @TArayama1961

以上、縷々のべましたが、ネタバレになりかねない「詳細につきましては来月の初め頃に会社のHPにてお知らせ」を、どうか考え直してください。また、この期に及んで恋々としたことを申すようですが、さらに考え直して下巻を1月なり2月なり早いうちに刊行してはくださらないでしょうか。

アリラン太郎 @TArayama1961

『大東亜忍法帖』は、あくまでクトゥルー・ミュトス・ファイルズに捧げんとして執筆したものなので、やはり御社から出してくださるのが最良の解決だと思うのです。昨夏のイベントに呼んでいただき、クトゥルーファンの若い読者の熱情の一端に接し、感じるところ大でした。彼らを悲しませたくありません

アリラン太郎 @TArayama1961

朝松健先生が、大局的な見地から、こうおっしゃってくださっています。 twitter.com/uncle_dagon/st…

朝松健ニュース @uncle_dagon

荒山徹さんクラスの作家の作品をキャンセルするということは社会的責任を放棄したとして版元が取次や書店や作家から問題視されることが予想されるが、大変なのはそこではない。「そら見ろ」と勘違いした他社や取次や読者がこれをキッカケに一斉に伝奇時代小説から離れる恐れがある。ここが大変なのだ。

2016-11-18 16:05:47

アリラン太郎 @TArayama1961

社長の思想信条は、わたしも後輩ジャーナリストとして敬するものがあり、今回、事実かフィクションかで悲しい対立となりましたが、史実に対する立ち位置ではそれほど乖離していないのではないかと感じております。それだけに二度のやりとりで発売中止をお決めになったことが残念でならないのです。

アリラン太郎 @TArayama1961

修正、削除をしない元原稿のままで下巻を刊行してはくださらないでしょうか。そのうえで一ヶ月なりの一定期間が過ぎた後、社長のご見解「なぜわたしは荒山徹に修正、削除を求めたか」を御社HPにてご掲載なされば、読者は両方を読み較べ、どちらの判断が正しかったかを知ることができると思うのです。

アリラン太郎 @TArayama1961

以上、わたしが考える最良の解決策です。読者の方々は下巻を待望してくださっています。出版不況といわれる昨今、すごくすごくありがたいことです。ここは争っている場合ではありません。剣をひき、矛をおさめ、読者諸賢の期待に応えたく思うのですが、いかがでしょうか。

アリラン太郎 @TArayama1961

追記。 ご返事いただける場合、窓口を一本化していただけると助かります。

芦辺　拓 @ashibetaku

創土社から『大東亜忍法帖』下巻刊行中止につき声明が出た。問題となったのは天皇暗殺計画という部分ではなく、幸徳秋水は実際に天皇爆殺を企てて死刑になったとの記述。雪冤までの関係者の苦衷を考えれぱ、一概に版元を非難できないものが感じられる。soudosha.jp/osirase.html

日下三蔵 @sanzokusaka

山田風太郎ファンとして注目していた荒山徹さんの『大東亜忍法帖』下巻発売中止の件、版元からの声明が出てやっと事情が判明した。小説の記述が歴史的に正しくなくてはならない、という版元の意見にはまったく賛同できないが、今回のケースは実在人物や遺族の人権に関わるということで理解はできる。→

日下三蔵 @sanzokusaka

しかし、それは上巻を発売する前に著者と話し合っておくべきことで、それを怠った版元サイドには作品の内容に容喙する資格が、そもそもない。さらに自らのミスで下巻の発売中止という異常事態を招いておきながら、著者からの上巻の販売停止の要請を無視して販売を続ける態度はまったく理解を絶する。

日下三蔵 @sanzokusaka

「人権を守るため」というお題目は立派だが、一方で自らのミスのツケを作者と読者に押し付けて何の責任も取ろうとしない不誠実な態度を続けていては何の説得力もない。本来であれば下巻の出ない上巻は即座に回収絶版とし、下巻が出た際に発生したはずの印税を満額支払うのがスジだと思うが……。