徳川家康が病没するまでの過程

アリノリ @a_ri_no_ri

２月１日 崇伝は森忠政や細川忠興などの大名や、傅奏、幕府官僚、龜屋榮任(呉服商)、その他多数の関係者から届いた書状への返事をひたすら書いて出している。家康の容態に対する言及はない。

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２月２日 前日に引き続き、崇伝は返事を出し続けている。１日の辰刻(午前８時)に江戸を出た秀忠が、この日の申刻(午後４時)に駿府に到着。「夜通し」とあり、夜も馬を走らせての来府である。秀忠は初夜(午後７〜９時)に家康と会った。江戸ー駿府は約200km。

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２月３日 板倉勝重への書状：家康は「御験気＝お元気」でありながら「御膳少しつつ上り」と相変わらず食欲がない。半井驢庵(なかいろあん)が調合した薬を少しずつ飲ませるが胸につかえてしまっている。

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２月４日 崇伝はまたひたすら書状を出す。相手によっては自筆で返事を書いている。細川忠興,立花宗茂などの大名、親王、寺院のなかで、故細川幽斎の夫人である崇壽院がやや特殊。女性への書状は家康の側室以外は彼女が初めてである。

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２月５日ー１ 板倉勝重への書状：家康の容態が改善する。３日の晩から脈も平脈となり、４日には藤堂高虎・崇伝を奥に呼んでゆるゆると話をし、その際に自分の病は寸白(＝サナダムシ)であると医師達に説明したなど、色々と語ったようだ。

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２月５日ー２ 勝重への書状：４日には食欲も改善し、朝晩の膳をよく召し上がられたとある。この改善との関係は不明だが、江戸にいる大名らに本多正信から家康の病が知らされ、彼らが追々見舞いに来るとも書かれている。

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正月27〜２月５日 疑問：家康の寸白診断→家康自身に寸白の経験があり、慶長11年には日野輝資を通して桑山法印に寸白の薬を与え、その処方も教えた。今の症状が寸白と違うのは分かる筈。寸白と自己診断した理由が不明。皆や自分を安心させるためか？

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正月27日〜２月５日 総括：２月２日に秀忠が到着、３日から家康の脈や食欲が改善する。家康の病が大名らに公表され、以後、じわじわと駿府に来る見舞客が増えていく。ただ、改善したにも関わらず、秀忠が江戸に帰る気配がない…。

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龜屋榮任(呉服商)は、付き合いが長いだけあって家康とは話が合うのかな。家康の所に「日々夜々御前被相詰＝昼間も夜も家康の所に侍っている」とある。こういう記述は後藤庄三郎にはないんだよな。同じ武家・貴族でない立場なのに、側近としては榮任の方が家康に近い。

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@a_ri_no_ri 後藤庄三郎は駿府で諸事を任されているっぽいから、忙しいのかもしれないけど、雑談する記述がないから、家康の話し相手が勤まるほどの教養はなかったのだろうな。実務では有能そうだが、家康の側近は実務と教養の両方が求められる。

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２月６日 本多正信への書状：崇伝は家康と秀忠が「御機嫌能由＝ご機嫌良く過ごされている」と書いて、本多正純に渡した。身内が駿府にいる場合は、身内経由で渡すようだ。毛利氏四代実録２月６日の輝元書状に「上様御咳気之由」とある。痰のせいで咳が出るようになったか。

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２月７日 福島正則など、あちこちから家康の回復を「目出度」いと書いた書状が届き始める。同時に崇伝への贈答品が日記に記されるようになる。便宜をはかってもらうorもらった礼と、一先ずの緊急事態が終わった認識故であろう。

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２月８日 細川忠興の書状が小田原から崇伝に届く。忠興は『梵舜日記』で21日に駿府からの上洛が確認でき、梵舜に家康と会い、元気だったことを話している。家康との面会日は不明。京都に着いた日付から逆算すると、14日前後か？『細川家記(綿考輯録)』にも日にちの記載なし。

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２月23日 板倉勝重への書状：家康は験気ではあるが、「御食事志かと上り不申候條」と食欲不振が再発している。22日には「一段と御心六つヶ敷相見候＝一段と御機嫌(気分？)が悪い」、23日には「一段と御機嫌能、御膳も朝五つ時分ニ如形上り不申候ツル」と一時的な食欲の回復もあったようだ。

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@a_ri_no_ri 「御膳も朝五つ時分ニ如形上り不申候ツル」を一時的な食欲の回復としてしまったが、「上り不申」とあるので家康の食欲は回復していない。

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２月29日−１ 板倉勝重への書状：情報の多い書状である。家康の容態は「御験気」であるが「いまだ御膳常之ごとくに上り不申候」とあり、食欲不振の再発が確認できる。咳も出て熱もあったが、驢庵の煎薬で良くなったとある。症状に咳と熱が追加されている。

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２月29日−２ 将軍秀忠は末の兄弟である義直,頼宣,頼房と共に毎日駿府城の本丸で家康と会っており、前田利常(秀忠の娘婿)と松平忠直(結城秀康子)も同行している。駿府滞在を続けている大名は伊達政宗,福島正則,黒田長政らで、彼らは家康の養女や孫を通して徳川との繋がりがある大名だ。

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２月29日ー３ 貴族では傅奏の２人がまだ駿府に滞在しており、烏丸光広が29日に到着。光広の妻は結城秀康未亡人。息子の日記によれば、土御門泰重も在府中？また、家康側近の本多正純と藤堂高虎が病(咳？)で出仕できない状況であるのも確認できる。恐らく、過労が原因であろう。

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@a_ri_no_ri 土御門泰重も在府中？と書いてしまっているが、泰重は日記を残した息子の方である。いち早く駿府に赴き在府しているのは、父親の「土御門 久脩」である。家康付きの陰陽師として活動が認められるため、家康の病に急いで駿府行きしたか。

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２月６〜29日 総括：２月は家康の病状に関する情報が少ない。小康状態で元気に話はできるが、じわじわと悪化してもいるようだ。大勢の見舞い客が来訪のせいか、過労(咳)？で藤堂高虎と本多正純が不出仕。江戸では本多正信も体調を崩している。

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２月６〜29日 家譜・書状による大名の駿府到着月日：伊達政宗は２月22日着。毛利秀元は２月５日着。福島正則は２月23日着。浅野長晟は２月23日には在駿府。佐竹義宣は３月２日着。上杉景勝は３月７日に江尻着。島津家久は３月19日着。

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２月２日以前〜４月 石清水八幡宮,鶴岡八幡宮,延暦寺,上賀茂神社,東大寺,興福寺,春日大社,高野山,法隆寺,三井寺,東寺など、数多くの寺社で祈祷が行われている。２月17日には宮中で神楽も催される予定であったが、篳篥が欠けていて延期となり、21日に清涼殿で義演が普賢延命法を行う。

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３月１日〜３日 相変わらず崇伝の所には大量の書状が来て、返事に追われている。３日に本多正純が「本復＝回復」し「日々出仕」しているが、藤堂高虎は「験気」でもまだ出仕していないとある。当時、よく使われる「験気」には「元気〜以前より元気」と幅があるため、本回復ではなかったやも。

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３月３日 在府の大名：前田利常,松平忠直,伊達政宗,福島正則,黒田長政(２月から在府)／蜂須賀至鎮,加藤嘉明,京極高知,蒲生秀行,佐竹義宣,松平定勝(家康異父弟),松平定行(家康の甥),松平定綱(定勝の三男),山口直友(３月からの在府？)。

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３月３日 板倉勝重への書状：「御験気ニ御座候、併御膳如常ニハ上り不申候故、各気遣可被成御推量候」→元気であっても、食欲不振は継続中。周りの気遣いを推し量ってほしいと崇伝は勝重に愚痴っている？のだろうか。後の書状でも見られるが、崇伝→勝重の書状は割とぶっちゃけ気味でもある。