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ア㊙️イさんのお尻と学ぶ海賊の世界(全14回)
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そこでこの研究では、排他的経済水域を55km×55kmのセルに分割し、一定の距離内に収まった選挙区の競争性の平均値をとったのだ。ここら辺は空間統計学の話になっちゃうから詳細は省くけど、恣意的に「この海賊はこの選挙区のもとで起こった」と決めた訳ではないことだけ知ってほしいのだ。 (11/17) pic.twitter.com/GuSo84wF3W
2019-08-23 20:36:06![](https://pbs.twimg.com/media/ECptg4LU4AAk36p.jpg:medium)
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統計分析の結果、選挙の競争性が高い地域ほど、海賊行為が発生する確率が高いことがわかったのだ。さらに、こうした効果は海岸線近傍に限られていることもわかったのだ(図を参照)。政治家に「見せつける」ならやっぱり海岸の近くがいいはずだから、納得できる結果なのだ。 (12/17) pic.twitter.com/Sz1wS0aLJU
2019-08-23 20:36:35![](https://pbs.twimg.com/media/ECptorfU8AA_8OJ.jpg:medium)
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さて、ここまではインドネシアに限った話で、他の国にも当てはまるかはわからないのだ。そこでこの研究では、沿岸部をもつ世界各国で1993-2010年の間に実施された選挙と海賊発生の関係も統計的に分析したのだ。 (13/17)
2019-08-23 20:36:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ここで使われた選挙の競争性の指標は2つあって、1つはその選挙が競争のある選挙であったかを測定した指標(そもそも競争のある選挙じゃなければ選挙前に海賊行為を行うインセンティブがない)で、もう一つは有効政党数なのだ。 twitter.com/bot99795157/st… (14/17)
2019-08-23 20:37:14![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
でも「たくさん政党がある」ことをどう測るか?この研究では政治学で標準的な指標である「有効政党数」を使ったのだ。これは単純に政党数を数える訳ではなくて、各政党の相対的な規模を考慮に入れることができる指標なのだ。 (6/13) pic.twitter.com/E2nI0nK26X
2019-08-05 22:54:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
分析の結果、競争的な選挙が行われている国では選挙の前年に海賊行為が増えることがわかったのだ。同様に、有効政党数が多い国でも選挙の前年に海賊行為が増えることがわかったのだ。他の国でもインドネシアと似たような傾向があることが示唆されているのだ。 (15/17)
2019-08-23 20:37:37![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
二つ目の分析はデータの制約もあってざっくりとしたものでしか無いことに注意なのだ。それに競争的な選挙が海賊に与える効果は「国家としての強さ」に条件づけられるように思えるけど、そこは検証していないみたいなのだ。とはいえ、多国間比較をも試みたのは多いに評価に値すると思うのだ! (16/17)
2019-08-23 20:38:06![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
今回の話は link.springer.com/article/10.100… からなのだ この論文の「海賊像」は今まで紹介したものとはちょっと違うのだ。海賊が強盗に近いのかマフィアに近いのかは難しいところだけど、RPG-7とかで重武装した海賊なんかを見ると明らかに組織性を感じるから、そういうグループも結構いると思うのだ (17/17)
2019-08-23 20:38:40貿易と海賊:海賊の間接的な経済コスト
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海賊は船舶を襲撃することで海運業者に直接的な損害を与えるだけでなく、巡り巡って海運コストの上昇を招くことで間接的に貿易量そのものにも悪影響を与えているのだ。じゃあ海賊によってどれぐらい貿易量が減ったと推計されるのか?そしてその損失額はどれぐらいなのか?実証分析の出番なのだ! (1/8) pic.twitter.com/fRIeQHUDEn
2019-08-24 16:54:28![](https://pbs.twimg.com/media/ECuEY2RU8AEKJBy.jpg:medium)
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海賊による襲撃が行われると、船舶自体がダメージを受け、輸送品は持ち去られ、船員は人質に取られて身代金を要求され、最悪の場合彼らは殺害されてしまうのだ。運悪く狙われてしまった海運業者は、本来であれば負う必要がなかったコストを被ることになるのだ。 (2/8) pic.twitter.com/QsK83mjMk3
2019-08-24 16:56:35![](https://pbs.twimg.com/media/ECuE3tVU0AAITLk.jpg:medium)
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さらに、海賊による襲撃リスクが上昇することで、例えば警備費用を多めに捻出したり、海上保険額が上昇したりして、被害に遭わなかった海運業者の輸送コストも結果的に増えることになるのだ。 こうした海賊リスクによる輸送コストの増大は、貿易量を減少させることが予想されるのだ。 (3/8) pic.twitter.com/LWqeRC33ad
2019-08-24 16:58:14![](https://pbs.twimg.com/media/ECuFP-SU4AAv5OC.jpg:medium)
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この研究では、2000-16年の間に行われた二国間の海上貿易額のデータと、各国の海上貿易ルート上で発生した海賊の発生件数のデータを統合し、統計分析を行ったのだ。 (4/8) pic.twitter.com/33qdLNjUoi
2019-08-24 16:59:07![](https://pbs.twimg.com/media/ECuFcs3U0AI7Kpp.jpg:medium)
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分析の結果、海賊の発生件数が増えると、二国間の海上貿易額が減少することがわかったのだ。推計によれば、海賊が10件発生するごとに、平均して貿易額は1.5%減少していたのだ。 (5/8)
2019-08-24 16:59:30![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
年間数百件の海賊行為が発生していることを考えると「10件で1.5%の減少」はかなりデカい効果と言えるのだ。加えて、この研究では分析に用いたモデルに基づき「実際の海上貿易額」と「海賊が一件も発生していなかった場合の海上貿易額の推計値」から、各年の損失額も推計しているのだ。 (6/8)
2019-08-24 16:59:52![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
各年の損失額の推計値は表の通りなのだ。2010年の米ドル換算でみたとき、最も額が大きかったのは2011年(年間で544件)なのだ。この年はなんと10億5600万ドル分もの海上貿易が海賊のせいで行えなかったことになるのだ。とんでもない額なのだ! (7/8) pic.twitter.com/IYmUCeXIiw
2019-08-24 17:00:44![](https://pbs.twimg.com/media/ECuF0fjUYAMWIer.jpg:medium)
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今回の話は doi.org/10.1080/102426… からなのだ。 これはあくまで「貿易量の減少」からみた海賊の「間接的な」経済的コストであって、ここに襲撃の損害額とか身代金額、公的な海賊対策費用みたいな直接的なコストを足し合わせたらさらに馬鹿でかい額になるはずなのだ〜。 (8/8)
2019-08-24 17:02:15海賊の “呪い” :身代金とソマリア経済
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乗組員を人質にして海賊が得た身代金はどこへいくのか?身代金という外貨の流入は地域経済にどんな影響を及ぼすのか?海賊のメッカであるソマリアを事例とした分析によれば、多額の身代金の流入は海賊に依存した経済を形成してしまう可能性が示唆されているのだ。 (1/23) pic.twitter.com/8kC1U0RzNa
2019-08-26 12:08:49![](https://pbs.twimg.com/media/EC3WMFTUwAEmpu6.jpg:medium)
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現在は最盛期を過ぎたとは言え、アデン湾は最も海賊行為が発生している海域の一つなのだ。この海域に海賊を供給しているのは、内戦勃発後に長らく無政府状態が続いていたソマリアなのだ(現在は内閣もできて落ち着いてはいる)。 (2/23) pic.twitter.com/wfpg1sKA08
2019-08-26 12:09:19![](https://pbs.twimg.com/media/EC3WTHyUYAAZHsy.jpg:medium)
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ソマリアの海賊は身代金ビジネスで荒稼ぎをしていて、2011年にはなんと1億6300万米ドルも身代金を得ていたのだ。じゃあ海賊はこの身代金をどう使うか?ほぼ全てが地元(ソマリア)で使われるんだけど、問題になるのはその額が馬鹿でかいこと、そして「外貨」であることなのだ。 (3/23) pic.twitter.com/pPyyHurHNe
2019-08-26 12:09:42![](https://pbs.twimg.com/media/EC3WYw8UcAAXqak.jpg:medium)
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身代金はほとんどがアメリカドルで支払われるから、現地通貨に両替しなきゃならないのだ。つまり、身代金の流入の帰結の一つとして、現地通貨価値の上昇が予想されるのだ。 これは後に述べるように貿易財を生産してる人にとってかなりマズイ状況になるのだ。 (6/23) pic.twitter.com/64MuR5Evda
2019-08-26 12:10:38![](https://pbs.twimg.com/media/EC3WmqwUwAAXFf_.jpg:medium)
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海賊は次の襲撃を準備するため、ボートや武器、燃料、食料、不動産、そして人員を雇う為に身代金を使うのだ。海賊たちは大量に消費を行うから、結果としてそうした財を供給している部門で「ブーム」が起こるんだけど、その恩恵を受けるのは一部なのだ。 (4/23) pic.twitter.com/2QX53j4FYM
2019-08-26 12:11:05![](https://pbs.twimg.com/media/EC3WtA1VUAEclm7.jpg:medium)
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海賊による経済ブームで恩恵を受けるのは非貿易財部門(例えば不動産とか)だけなのだ。というのも、貿易財(例えば工業製品や食料)は輸入で代替することが出来るからなのだ。海外から安く輸入できちゃうから、貿易財を作ってる地元民は海賊の恩恵を受けることができないのだ。 (5/23) pic.twitter.com/ywhmP0dit1
2019-08-26 12:12:15![](https://pbs.twimg.com/media/EC3W-EiVAAE41EW.jpg:medium)
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ソマリアの主要な輸出産品は畜産物で、中東諸国がその行き先なんだけど、海賊の身代金流入は現地通貨価値の上昇を招くことで貿易財全体の国際的な競争力を弱めてしまうのだ。結果として、輸入は増える一方で、輸出は減少すると考えられるのだ。 (7/23) pic.twitter.com/kDjkq9Yabi
2019-08-26 12:13:10![](https://pbs.twimg.com/media/EC3XLrVUcAA6rnO.jpg:medium)
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ここまでの話をまとめると、海賊ビジネスの結果として、 身代金(外貨)の流入 ↓ 実質為替レートの上昇(帰結その1) ↓ 輸出の国際的な競争力低下 ↓ 輸出が減少(帰結その2)/輸入が増加(帰結その3) という現象が起こる可能性があるのだ。でもこれの一体何がいけないのだ? (8/23)
2019-08-26 12:13:35