令和３年度最新版『アメコミは売上でも日本の漫画に押されている』という言説に対する反論集+α

椎名ゆかり @ceena_J

実際に北米で一番売れているのは「子供向けグラフィックノベル」のカテゴリーです。ICv2によると2021年4月「子供向けグラフィックベル」が一般書店とコミックス専門店を合わせたグラフィックノベル市場全体のおよそ３分の１を占めています。続いてMANGA、大手スーパーヒーロー、その他となります。（続

椎名ゆかり @ceena_J

北米では「コミックブック」市場（≒コミックス専門店）もまだかなりの存在感があります。あの「はてな」記事が言う「（日本マンガが）あまりにも強くなりすぎてちょっと心配」「下手するとアメコミ文化そのものが消えかねない」という状況では、まったくないと私は思います。（続

椎名ゆかり @ceena_J

しかも、上記で述べたように一番大きなシェアを占める「子ども向けグラフィックノベル」市場に、日本のマンガはほとんど参入できていないのです。（続

椎名ゆかり @ceena_J

とは言え、配信サービスの拡大に伴ってアニメ化された作品、JUMP作品が急伸しているのも事実。今後更にMANGAが伸びる可能性は大きくあると言えます。ただし、webtoonの存在などもあって、海外でのMANGAがこの先単純に、順風満帆だと感じているわけでもありません。（続

椎名ゆかり @ceena_J

統計の話に戻ると、コロナ禍で急伸を見せる電子書籍はなかなか統計的な数字に表れてきません。特に独立系プラットフォームや広告収入のサービスなど、外部に売上が可視化されないため、北米のコミックス／MANGA市場の全体像は近年とても見えにくくなっている状況です。（続

椎名ゆかり @ceena_J

ここ20年ぐらい北米のMANGA市場を見てきた感触から言うと、「あっと言う間に景色が一変する」ことが複数回あったので、先を読むのは本当に難しいと感じています。長々と失礼しました。（おわり）

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

日本のマンガが北米でアメコミを圧倒しているのを赤裸々に見せ付ける映像。全米最大書店チェーンにアメコミなどの本棚が三つに対して、日本マンガは九つ。 twitter.com/SirDemiface/st…

Demiface @SirDemiface

People were posting about the growth of Manga at their local Barnes and Nobles and I decided to check mine out and well.... pic.twitter.com/2pPNmTnDDR

2021-05-17 02:05:40

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

読み手だけじゃなくて作り手でもマンガ・アニメ絵柄は圧倒的です。10年弱前にミネソタ州ミネアポリスで開催されていた小さいアメコミイベントに出展してた絵描きさんの1/3が若手20代前後の描き手の卵で、30人くらいいましたが全員もれなく日本の美少女マンガ絵柄に影響されていました。 twitter.com/dankanemitsu/s…

兼光ダニエル真 冬コミ新刊委託中 @dankanemitsu

アメリカ中西部の一般向け画材店での光景。すごい時代になりましたよ pic.twitter.com/R7ViIMYMOB

2019-05-15 05:21:33

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

去年、日本語翻訳された記事でアメコミコーナーが削減されてマンガコーナーが広がるのが提示されていますね。 kaikore.blogspot.com/2020/11/japane… twitter.com/Sgk6W3Xy8k7yvc…

シロの人 @Sgk6W3Xy8k7yvcd

いやぁ…これは流石に日本コミックフェアとか、日本コミック専門コーナーの棚とかじゃないの？ TSUTAYAが洋楽の棚ばっかりになるとかそういうことでしょ？ ないない、ないって。 twitter.com/dankanemitsu/s…

2021-05-19 01:54:20

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

@Sgk6W3Xy8k7yvcd アメコミ専門店にとって日本マンガは救世主のような役割を果たしています。中西部の大手アメコミ専門店でイベントを主催するくらいでかいのが私の母の地元にありますが、そこも取り扱っているのはアメコミよりもマンガの方が多いです。メルマガでアメコミの広告しかしていないにもかかわらずです。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

アメコミの場合、とかくスーパーヒーロー系出版社において重要な収入源は同一タイトルの複数購入です。英語圏の大きなアメコミ専門店に行けばわかりますが、中古を大量に販売しています。アメコミは毎回約32ページの単刊発行形態が基礎です。人気ある単刊の値段は高騰します。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

単刊が高騰するのを目当てに複数購入する人も数多くいます。自分用に一冊勝って、後で高騰したら保存用を売りに出すという具合です。アメコミ出版社もこの傾向を武器に中身は同じなのに表紙だけ違うバージョンを複数出したりします。多い時には5種類、8種類、最大13種類というのもありました。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

購入する店舗によって特典が違う商売は日本でもけっこう展開していますが、90年代前半までのアメコミ産業の大規模拡大は90年代中盤に発生したアメコミバブル崩壊によって甚大なダメージを受けます。全米の2/3のコミック専門店がこの時に潰れたという一説もあります。 en.wikipedia.org/wiki/Comic_boo…

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

日本で生活していると見落としがちですが、アメコミも実はけっこう多種多様です。スーパーヒーローモノ以外のアメコミもたくさんあったんですが、90年代中盤のバブル崩壊で多くの中小アメコミ出版社は潰れてしまいました。残った作品も中堅ばかりで新参には非常に厳しい状況が長年続きます。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

なぜアメコミは同じキャラや物語を何度も使いまわすか言う理由の一つが「定番しか売れない」という強迫観念が強く働いているのかもしれません。日本も「同じジャンルしか売れない」「キャラクターの造形が似たり寄ったり」という問題を抱えていますが、ここで二つ大きな違いを指摘します。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

1)アメコミ、とかく人気あるスーパーヒーローモノのキャラクターは作家の所有物ではなく、出版社の財産です。もちろんそのキャラを最初に生んだ原作者と出版社の間の契約書や裁判所での係争結果で所有権の性質はかわりますが、多くの昔から馴染まれているキャラモノの場合、出版社の権限が大きいです。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

この結果、新参者は常に昔から継続しているシリーズに対して競争せねばならず、参入障壁が非常に高い。しかも市場が小さい（アメコミ市場は日本の1/8以下）なので人気を積み上げてゆく戦法がとても大変です。言い換えると「ドル箱は常に排他的独占性を発揮できる古参が握っている」状態です。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

日本で例えるならば「ジャンプに持込をする作者は手塚治虫の作品とタイマンできる面白さ最初から期待されている」でしょうか。極端な例えですが、それほどまでに競争が一点集中しており、発表できるフィールドがかなり偏っている側面があります。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

2)複数のジャンルが十分に共存していないために読者の傾向が長年の間、特定クラスターに固まってしまったことです。特定の産業の健全性や競争力は需要にも影響されます。同じような人が同じようなものばかりを求めていると色々な偏りが発生しています。これは日本でも課題となっていますね。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

しかしアメコミ市場においてこれまで非常に非常に大きな比重を占めてきたのが「1950~1970年代生まれの白人男性」です。2020年代現在、アメコミ出版社は色々な模索を始めていますが、依然として現時点で50歳+白人男性の独占性は大きく、この読者層を無視した展開に対してかなりの反発が起き易いです。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

実際にアメコミイベントに行くとかなりツライ現実を見せ付けられます。映画会社やゲーム会社、その他メディア展開の関係で出展してる企業はメインショーステージに複数並びますが、一般参加者に家族連れや若者、マイノリティーの方々とてもたくさんいます。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

一方、実際のアメコミ作家が出展しているスペースがアーティスト・アレーと呼んだりしますが、こちらに来場する一般参加者は50歳+白人男性が圧倒的に多いです。いかにアメコミのマニア層がこの世代で固められているかが赤裸々にわかる瞬間です。映画化されている割には読者が増えていないのです。

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

もちろんアメコミ読者層はイベントに来る人だけではなく、自宅で楽しむ人が多いはずですし、50+白人男以外の読者層も（皮肉な事に？）日本マンガで触発されて増えてます。しかし北米での日本マンガ読者層が老若男女と広がる一方で古くから続くスーパーヒーロー系読者は凝り固まっている印象が強いです

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

つまりアメコミはキャラクター産業においての構造的にも読者層的にも競争が偏り、裾野が広がり難い傾向が現時点ではまだ顕著です。日本は異文化からやってきた作品群でもあるにもかかわらず成功している理由の一つは「既存のアメコミ読者とは違う読者層を開拓している」という点が大きいと思っています

兼光ダニエル真 @dankanemitsu

表現の自由を大幅に狭めたコミックコードが残した負の遺産にアメコミは苦しんでいる側面がもちろんあります。日本のマンガ・アニメ産業では子供向けと言う決め付けに跳ね返した結果、多様性が武器であり表現の幅が広めたのが国際競争力を高めたのも事実でしょう。