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「塾に依存した学校の授業」はなぜ生まれたのか

「これは塾ですでに習っただろうから」と説明を省いてしまう公立中学の実態がある。昔の世代は塾に行かずに学校の授業だけで学力を養えたのに、なぜ「ゆとり後」に塾依存が進んだのか?考察してみた。
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shinshinohara @ShinShinohara

私が中学1,2年の頃、塾に通っていたのは3割程度だったように思う。3年生になると約6割。塾に行っている子どもは好成績だったかというとそうでもなく、どちらかというと、「塾にでも行かなければ勉強なんか絶対しない」という理由で通っていた同級生が多かった。

2016-01-06 18:47:26
shinshinohara @ShinShinohara

しかし私の世代以後は徐々に塾に通う子供が増えて、私が塾で教え始めた頃(90年代初め)には、中学1年生の6割程度が塾に通うようになっていた。中学3年だと8割弱になっていただろう。85~90年のバブルの頃から、教育にお金をかけられるようになったのも理由の一つだろう。

2016-01-06 18:50:34
shinshinohara @ShinShinohara

通塾率が一気に上がった、と実感したのはゆとり教育から。「学校では円周率を約3と教えるようになるらしい。そんなことで受験戦争を勝ち残れるのか?」という不安が親たちを虜にし、塾通いの子どもが一気に増えた。

2016-01-06 18:55:16
shinshinohara @ShinShinohara

バブルの最中あるいはそれ以後に中学生だった世代だと、大学に進学した人は、大半が塾に通っていたのではないだろうか。バブルは85年から始まったが、そのころ12歳だった人も今年43歳ということになる。ということは、今の教師の中核を担う人たちの大半が「塾経験者」ということになる。

2016-01-06 19:00:46
shinshinohara @ShinShinohara

つまり、教師の多くが「進学するには塾に通っている必要がある」と考えるようになっていても不思議ではない。実際、塾ですでに習ったという前提で教師が授業を進めるという子どもの愚痴を聞いたことがある。知人の塾講師も同様の経験があった。「塾に依存した授業」が全国で出現している可能性がある。

2016-01-06 19:04:24
shinshinohara @ShinShinohara

塾講師をしている知人によると「これは塾で習っているだろうから」と解説を省く教師もいるそうである。これでは、塾に通っていない子供にとってはたまらない。学校の授業だけで習得できるのが本来なのに、塾に行かなければ十分な説明も受けられないのだ。

2016-01-06 19:06:12
shinshinohara @ShinShinohara

私が複数の中学校で確認したところ、教科書をほとんど使わずに授業を進める教師がどの学校にも確認された。配布プリントで授業を進めるという。塾通いの子どもでも腕まくりするようなレベルの高いもので授業が進められるので、塾に通わない子供はチンプンカンプンになってしまう。

2016-01-06 19:08:15
shinshinohara @ShinShinohara

よいプレゼンは伝えたいことを1つだけに絞るという。これは授業にも言えること。教科書と配布プリント、参考書や問題集。教材が増えすぎると、「すべてこなさなければ習得できないのか」と、子供はげんなりし、勉強する意欲を失ってしまう。教材は教科書1本に絞った方が、子供の迷いを払える。

2016-01-06 19:10:06
shinshinohara @ShinShinohara

しかし現在の学校で活躍する教師は、塾通いがほとんどという世代。塾で予習してから授業を受ける、という自分の経験に基づいて授業をしてしまっても不思議ではない。そして実際にそうしてしまう教師が少なくない、というより、そちらの方が多いというのが実感である。

2016-01-06 19:12:10
shinshinohara @ShinShinohara

しかし私以前の世代は塾になんていかなくても好成績を上げる同級生はいくらでもいた。しかも内容はゆとり教育以前の膨大な量。それでも自力学習で事足りたのだ。教科書と授業のノートを読み返せば、公立高校に進学するのに十分な学力を磨けた。

2016-01-06 19:14:11
shinshinohara @ShinShinohara

85年以前に中学時代を終えた世代だと、塾に通うのはむしろ「お勉強のできない子」だった。学校の授業についていけないので、過去の授業のよく分からないところを塾で復習するといった形態だ。むろん、超進学校を目指すための塾通いもあったが、学年で数人の特殊事例だった。

2016-01-06 19:16:31
shinshinohara @ShinShinohara

そうした旧世代の人間から見れば、「中学程度の内容、塾なんて通わなくても自力学習で事足りる」というのが実感。授業についていけないなら塾に通うのもありだが、そうでないなら塾に通わずに自力で学習すればいいじゃないか、という時代だった。

2016-01-06 19:18:39
shinshinohara @ShinShinohara

私の世代から、わずか3年ほど後(85年に中学生の時代)になると、多くの塾でスタイルが変わってくる。「復習型」から「予習型」に変わってきたのだ。私の世代までは授業でついていけなかった部分を塾で復習するスタイル。それが「学校で習う前に予習してしまう」塾が増えていった。

2016-01-06 19:20:19
shinshinohara @ShinShinohara

私が90年に始めた塾は、その地域では例外的に「復習型」の塾だった。他の塾はみな、学校で習う前に教えてしまう「予習型」の塾だった。このため、90年代ですでに問題が表面化しつつあった。「学校の授業を退屈がる生徒」の出現だ。

2016-01-06 19:22:05
shinshinohara @ShinShinohara

90年代前半は「予習型」の塾でもせいぜい授業の1週間前を走るくらいだったので、「塾で習ったばかりのところを忘れないうちに授業で復習できる」といった感覚だったようで、不都合はそんなに大きくはなかった。しかし塾がどんどん授業を早めていくと、そうはいかなくなってきた。

2016-01-06 19:24:25
shinshinohara @ShinShinohara

「予習型」の塾が、学校の授業に先行して教えるばかりでなく、応用問題もどんどんやらせて、授業で習うころには完全に「仕上がった」状態にしてしまうようになった。こうなると、学校の授業は退屈になる。というより、学校で授業を受ける意義を見失ってしまう。

2016-01-06 19:26:25
shinshinohara @ShinShinohara

90年代はバブルが崩壊したとはいえ、親御さんたちがバブルの空気を胸いっぱいに吸い込んでいた時代。このころは公立高校に行くと進学に不利だと言われ、エスカレーターで大学に進める私立高校に進ませたがる親が増えた。このため、私立の偏差値が急上昇した時期でもある。

2016-01-06 19:28:01
shinshinohara @ShinShinohara

90年代後半になると、学級崩壊が話題になり始める。学級崩壊は小学校ですでに起きていたので、原因は違うとは思うのだが、今思うと、塾ですでに完璧に予習してしまった子供が増え、授業を真面目に聞く必要を感じなくなったことが学級崩壊に拍車をかけた可能性がある。

2016-01-06 19:31:29
shinshinohara @ShinShinohara

公立高校をバカにし、ひいては公立中学をバカにするようになり、中高一貫の私立、そしてそのままエスカレーターで大学へ。90年代にブームになった進学熱は、塾が「予習型」に舵を切るのを助け、学校の授業を無意味化することを手助けしてしまった可能性がある。

2016-01-06 19:34:04
shinshinohara @ShinShinohara

さらにゆとり教育で「円周率は約3」で教えるということが象徴的に話題になり、「公立では十分な学力が育たない」という「信念」が根付いてしまった。このため、塾通いは必須、できれば私立に進学したほうがよい、というイメージが固まってしまった。

2016-01-06 19:38:28
shinshinohara @ShinShinohara

そんな時代に中学生だった人たちが、今の学校の教師。塾通いを当然視するのはやむを得ないところではある。しかし現在はバブルの残り香があった時代とは全然違い、食事も事欠くような貧困世帯まである時代である。塾通いを前提にするのは非常にまずいと言える。

2016-01-06 19:40:12
shinshinohara @ShinShinohara

しかし今の40歳以下の教師だと、「塾ですでに習った内容を授業で聞くのは退屈で苦痛」という記憶を持つ世代だろう。授業が簡単すぎてつまらない、苦痛だという「浮きこぼれ」と呼ばれる生徒に過去の自分を投影してしまい、塾通いの子どもを前提に授業を組んだとしても不思議ではない。

2016-01-06 19:41:56
shinshinohara @ShinShinohara

しかし状況は変わった。日本経済は相当に傷み、経済的に苦しい家庭が増えた。塾に行かずとも十分な学力を養い、進学できる環境を提供するのが、現在の公立中学校の使命だと言えるだろう。中学校教師は、ぜひこの点を肝に銘じていただきたい。

2016-01-06 19:44:02
shinshinohara @ShinShinohara

「塾に行っていない低学力の子どもに授業を合わせたら、塾通いの子どもたちは退屈がり、その親たちからクレームが来るのは必至」とお悩みの教師も多いだろう。その苦境は、中学教師から直接伺ったこともある。授業をゆっくりにすれば「浮きこぼれ」が生まれ、速くすれば「落ちこぼれ」が出る。矛盾。

2016-01-06 19:51:53
shinshinohara @ShinShinohara

この矛盾を解消するには、すでにまとめたように、学力の異なる生徒たちでグループを組ませ、グループ内で教え合わせる方法などが一案だ。文科省はぜひ検討してほしい。 「「落ちこぼれ」も「浮きこぼれ」もともに能力を高める策 」 togetter.com/li/921984

2016-01-06 19:54:25