チキンラーメンと安藤百福、その虚像と実像〜近代食文化研究会さんの検証（※長いシリーズの一部です）

近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか？』発売中 @ksk18681912

”たしかに陳さんの作った鶏糸麺の存在は知ってます。ええ、陳さんという方も知ってます。けれど、あれは即席麺というよりは「焼きそば」に似たもので、ウチが開発したチキンラーメンとは全く違うものなんです。” pic.twitter.com/mpD7gK8UdS

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”会長はそれを心得ていて、まっ、誇りとでも言うのでしょうか、色んなところで『日清のチキンラーメンが第一号で、私がそれを開発した』と言っております” 日清食品大阪本社の幹部によると、陳栄泰の鶏糸麺は”「焼きそば」に似たもの”なので、互いの特許は関係ないのだそうです。 pic.twitter.com/oL2qHiXBee

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これはおかしな主張で、特許の類似性が問題になっているのに、製品の主観的な見た目や食感に論点がずらされています そもそも百福と陳の特許が似ていないとするならば、なぜ後に述べるように、３年間も泥沼の特許争いを続けたのか説明が付きません

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とはいえ、この発言は雑誌の記事における「日清食品大阪本社の幹部」という匿名人物の発言であり、日清食品の公式発言ではありません。 雑誌における匿名発言者の発言は信用のおけるソースとはいえません。

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この財界展望の記事以外に、特許盗用問題に対する安藤百福あるいは日清食品の反応を発見することはできませんでした。 特許盗用という主張に関して、日清食品は基本的に黙殺する姿勢のようです。 それは企業として正しい判断です。

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許炎亭と陳栄泰が主張する、安藤百福が陳の特許を盗んだという主張には、客観的な証拠がありません。 たとえ日清食品の前身会社を設立した許炎亭の証言があったとしても、またそれが事実であったとしても、証明責任は陳栄泰側にあります。

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客観的な証拠が提示されるまで、日清食品側がこれを黙殺するのは当然のことです。 そういうわけで、特許盗用問題の真実は当事者のみぞ知るということになりますが、第三者から客観的に見て、おかしいと言える事実が一点だけあります。

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安藤百福が最初の特許を出願する際に、本人の名前（呉百福）ではなく、妻の母親である安藤須磨の名前で特許をとったことです。 「まんぷく」で松坂慶子が演じる、義理の母親のモデルがこの安藤須磨です。 pic.twitter.com/k3YnbV9h3d

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安藤須磨とインスタントラーメン開発の関わりについては、週刊読売１９６９年２月７日号において安藤百福自身が語っています。 pic.twitter.com/pEiQfP3CZi

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”ヒントを与えてくれたのは、去年なくなった、わたしの母であり、会社の監査役だった安藤須磨です。これをお話すると、ちょっと長くなるんですが。” インスタントラーメン開発のヒントは、義理の母親から与えられたと、百福はいいます。 pic.twitter.com/7IOj4aYasP

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百福の話を要約すると、飼っていた鶏が玉子を産まなくなったので屠殺したところ、そのシーンにショックを受けた百福の子供が、トラウマで鶏肉嫌いになった。 しかし、安藤須磨が鶏ガラを買ってきてラーメンスープを作ると抵抗なく食べた pic.twitter.com/DzyBWQ4UjM

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”ところがわたしの母が、カシワのガラを買ってきて、それをたき出して、ラーメンをつくって家内中に食わしたんですが、子供がたいへんよろこんで食べたんです。” ”それでまア即席ラーメンの栄養価としてトリを用いるべし、という決断がついた。” pic.twitter.com/y3Xlb4BJ1t

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安藤百福が何を言いたいのかさっぱりわかりませんが、なぜチキンラーメンがチキン味なのかという問いに対しては、なぜ豚骨であるとか他の素材ではなくチキンを選択したのかという答えがなければいけません。 子供の鶏肉嫌い克服とはなんの関係もありません。

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安藤須磨が鶏ガラを買ってくるまで、鶏ガラが安いということを安藤百福が知らなかったということでしょうか？ それを「インスタントラーメン開発のヒント」とまでいうのは、大げさにすぎると思いますが。

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いずれにせよ麺を油で揚げる、麺に味付けをするといいう百福の特許と、安藤須磨が鶏ガラを買ってきたことにはなんの関係もありません。 特許のアイディアに関しては、安藤須磨の寄与はまったくなく、自分ひとりで考えついたというのが百福の主張です。

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それではなぜ、特許を安藤須磨の名前で出したのか？ 許炎亭や陳栄泰に「呉百福」が出願したとばれないように、時間稼ぎのために「安藤須磨」の名前で特許を出した。 それ以外の説明があるならば、聞いてみたいものです。

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明日以降は、陳栄泰、安藤百福、張国文、各々の特許の内容と、泥沼の特許争いについて。

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本当に安藤百福自身が「世界初のインスタントラーメンはチキンラーメンである」と主張していたのか、第三者が勝手に言っているだけなのかを検証し始めたら時間がかかりすぎて今日の更新は休みます。

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百福自身が書いた自伝が収録されている「奇想天外の発想」（1983年）「魔法のラーメン発明物語」（2002年）では、 「インスタントラーメンを発明した」 「世界初」 という言葉は慎重に回避されているんですよね。

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あった 週刊読売１９６９年２月７日号P58で、自分がインスタントラーメンの生みの親と認めていた pic.twitter.com/jqja367weY

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でも「生みの親」と「発明」は微妙に違うか…… もう一度資料総点検しよう

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現在池田と横浜にある「インスタントラーメン発明記念館」、一昨年に「安藤百福発明記念館 （愛称：カップヌードルミュージアム）」に改名したんですよね。 インスタントラーメンを発明した、とは主張しないようにした。百福の発明は他にもありますから。 なぜ？

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chickenramen.jp/history/ でも日清食品は、安藤百福が世界初のインスタントラーメンを開発したと明言しているのですよね