小林和幸編『明治史研究の最前線』読書メモ

2020/06/23 コラム13まで読破
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烏頭の読書メモ @hollywood20204

一冊目は小林和幸編『明治史研究の最前線』を読みます。アメリカ史の研究書読まんかいと怒られそうですが許して下さい。

2020-05-27 02:02:53
烏頭の読書メモ @hollywood20204

第一章は維新史研究としての幕末史。一般にはペリー来航から王政復古まで、つまり1853-1868年を指すが、研究では前後の幅をもう少し広く取るとのこと。また、一般に想像される幕末史研究は実際の研究と違うことも示したいと。新撰組とかばかりやってるわけでは確かにないでしょうからね。

2020-05-27 02:22:57
烏頭の読書メモ @hollywood20204

マルクス主義史学期については史実との乖離が指摘されるようになったとしつつも、幕末・維新期の連続性、国家権力の性格、明治維新の世界史的性格といった今は低調な問題に取り組んだ点を評価。昨今のグローバルヒストリーの興隆を考えると、明治維新の世界史という議論が低調なのは意外。

2020-05-27 02:33:02
烏頭の読書メモ @hollywood20204

マルクス主義史学への反省として大きな転機になったのが宮地正人「幕末過渡期国家論(『講座日本近世史8』有斐閣、1981)で、今読み返しても現在に繋がる論点が多く出揃っているとのこと。幕末史研究の現代的古典として読む価値は高そうです。

2020-05-27 02:45:14
烏頭の読書メモ @hollywood20204

いわゆる一会桑の研究が始まったことで幕府対薩長という単純な史観が立体化したとのこと。家近良樹『幕末政治と討幕運動』(1995)が特に重要で、会津藩評価を大きく変えたそう。また、この研究が新撰組を学術的対象に加えることを可能にしたとも。いずれも従来の研究が等閑視していたと。

2020-05-27 03:00:45
烏頭の読書メモ @hollywood20204

新撰組ってかなり最近まで学術的研究の対象じゃなかったんですね。ちょっと意外。本格的な研究書が最初に出たのが2004年らしいので、20世紀までは専門の研究書すらなかったと(論文はあったでしょうが)。

2020-05-27 03:04:20
烏頭の読書メモ @hollywood20204

現在の研究者の共通理解として「文久期の画期性」と「幕末≠志士の時代」が挙げられ、特に後者は藩を重視するとの指摘。「上からの政治運動」みも感じますが、志士を全否定はしていないので「上下の相互作用」を捉えつつも上=藩を重視するということでしょう。この辺り私の専門分野も無関係じゃない。

2020-05-27 03:22:13
烏頭の読書メモ @hollywood20204

攘夷とは単に外国人を襲い外国に打ち勝つことではなく、むしろ国内を戦時体制に置いて改革を目指しており、その意味で公武合体めた含め色々な派閥と手を組み得たとのこと。単なるゼノフォビア的テロでは済まなくなっていますね。

2020-05-27 03:37:42
烏頭の読書メモ @hollywood20204

コラム3の奥羽越列藩同盟について、戊辰戦争の敗北側が行っていた外交の試みの話が興味深いです。新潟港を確保することは列藩同盟にとって国際的支持を得るのに重要だったという指摘がなされているとのこと。実際、新潟港ではプロイセンのシュネル兄弟、イタリアのド・ラ・トゥールなどが暗躍したと。

2020-05-27 13:46:54
烏頭の読書メモ @hollywood20204

第二章は明治前期(明治憲法以前?)の政府機構史。太政官制については中野目徹『近代史料学の射程ー明治太政官文書研究序説』(2000)が近代文書学の開拓的研究でもあり画期とのこと。ただ、全体的にテーマのバラつきが多いのか、各論における史学史的転換期がやや読み取りにくいのが難。

2020-05-28 17:10:10
烏頭の読書メモ @hollywood20204

転換期という議論よりは、むしろいわゆる文書論が近代史においても2000年頃から本格化したことを幅広いテーマで例示する内容ですね。単なる文書所在地情報発信術でなく、文書の様式からそれを生み出した機構、社会まで考察する史料学の発達。

2020-05-28 17:36:13
烏頭の読書メモ @hollywood20204

1873年に実は内閣が導入されたことがあり、1885年には太政官制の非効率で政治的決断力に欠ける難点を克服する職権を内閣に与えようとしたが、明治憲法になると逆に内閣の規程がなく、首相の権限も弱くなっていた。どうしてこうなったのかという問いが提示されています。

2020-05-28 19:04:06
烏頭の読書メモ @hollywood20204

皇室制度の研究は昭和から平成への変わり目で大きく進展し、10年間でその制度史的展開が大正末期ごろを完成期とする形で進んだと。制度史ですらここ30年を待たねばならなかったというのは、戦後の花形が天皇制研究だったことを踏まえると不思議な感じがします。史料公開の問題でしょうけど。

2020-05-28 19:13:43
烏頭の読書メモ @hollywood20204

コラム5では太政官制の史学史を変遷の観点から見ており、従来の政治史では政治的指導者の異なるビジョンが衝突する様子に着目されてきたが、この意見対立から政府の分解が起こらなかったのは何故かという問いが注目されたことで「内閣」研究が進み、同様の問いは「内閣」以外の機構研究をも加速。

2020-05-29 16:13:26
烏頭の読書メモ @hollywood20204

また、太政官制は「内閣」のような調整機能の必要だけでなく、不安定な地方統治の改善もあったとし、まだ知られていない他の政治・社会的理由があるはずで謎はまだまだ残っていると言います。アメリカ史畑として、制度史研究が盛んなのは「隣の芝生は青い」的な感情を惹起しますね。

2020-05-29 16:19:57
烏頭の読書メモ @hollywood20204

第三章は思想史研究ですが、そもそも歴史学の思想史研究は盛んかと疑問から入り、思想史の学際性を「入会地」と借用した言葉で表します。また、思想史は「単に誰々が何と言った」という史実の組み合わせだけでは成立せず、分析枠組や問題意識がものを言う世界とします。

2020-06-05 18:24:50
烏頭の読書メモ @hollywood20204

日本近代政治思想史は戦後に始まるとし、政治学からは丸山眞男、歴史学からは家永三郎が始祖的であるとします。近代と封建、進歩と保守の二分法。

2020-06-05 18:29:46
烏頭の読書メモ @hollywood20204

政治学の思想史は今も丸山の存在感が大きいが、歴史学の思想史で家永はもはや参照されない。これは政治思想そのものか、それを通じて当時の歴史を知ることかという目的の差異もある。また、丸山と家永は戦前日本の思想を解明して現代日本を考える問題意識があり、西洋近代思想に至らない要因に焦点。

2020-06-05 18:42:45
烏頭の読書メモ @hollywood20204

歴史学では色川大吉、鹿野政直、安丸良夫らが民衆思想史を切り拓く。色川は「もう一つの近代」を摘出、安丸は民衆意識の内在的あり方を解明することに力点。色川流は1981年の「民権百年」で盛んになり、民権家が検証されたが、その後はむしろ停滞。

2020-06-05 18:48:40
烏頭の読書メモ @hollywood20204

明治民権家の思想が高度経済成長を経た日本に意味があるのか疑問視され、また近代が理想ではなく自由を奪うものという理解も現れた。特にアンダーソン『想像の共同体』が影響。国民国家自体が束縛であり、民権家もその構築を目指した点で明治政府と変わらないとされた。

2020-06-05 18:52:55
烏頭の読書メモ @hollywood20204

国民国家批判と言語論的展開が結合し、「メタヒストリー」により通史・概説は特権性を喪失。しかし、全く通史がなくなったわけではなく、河野友理編『近代日本政治思想史』(政治学)と中野目徹編『近代日本の思想をさぐる』(歴史学)が現在の通史・概説のあり方として示唆的とする。

2020-06-05 19:59:52
烏頭の読書メモ @hollywood20204

河野編は政体、正閏などキー概念につき代表的思想の提示で満足せず、一つの通史的流れにはまらない多面性を示す試みとなっている。一方、中野目編は時系列的配列自体をやめ、またテーマ史にも留まらず。いわば思想を読み解く「視角」を提示し、それが如何に多面的・立体的であるかを伝えているとする。

2020-06-05 20:04:43
烏頭の読書メモ @hollywood20204

政治学の思想史は天才的発想や美文に特徴があるが、歴史学の思想史は地味な作業の果てに成り立つ「センス」だと言う。この地味な作業こそ史料批判であり、中野目は近代史料学の発展に注力し、その方法が広がりつつあると。全集だけを使う思想分析に代わり、周辺史料も渉猟し史料批判する研究も登場。

2020-06-05 20:11:15
烏頭の読書メモ @hollywood20204

史料批判の発達は新聞論説の比定にも普及し、福沢のアジア蔑視・侵略論の根拠とされてきた時事新報の論説が他人のものの可能性が高いという説が登場、論争になった。論説比定の方法論はまだ開拓途上とのこと。ちなみにアメリカだとフェデラリスト研究で誰がどの論考を書いたかという研究が盛んですね。

2020-06-05 20:15:51
烏頭の読書メモ @hollywood20204

私見ですが、最初から近代研究にならざるを得なかったアメリカ史研究は、史料批判の方法論を近代史において鍛えられることになったのかもしれません。ただ、現地のアメリカ史は日本ほど史料批判への拘りが強くない節もあり、「歴史学研究の比較技術史」とか必要じゃないかという気もします。

2020-06-05 20:20:22
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