【ある冒険者の失敗】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の失敗89】「うわっ！」「っ！ なんだ、子供か」怯えるゴブリンを見て冒険者たちの戦意は失せた。「ぼ、ぼくは悪いゴブリンじゃない」「はいはい。じゃあな」素通りする冒険者たちの背に向けてゴブリンは呟く。「僕は、僕の親を殺した人間を見逃すような悪いゴブリンじゃない……！」

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【ある冒険者の失敗90】死んだら教会での蘇生が普通なんですが、困った人もいまして――「ゾンビにしろ!? 不老不死になりたいから!?」「頼むよロマ！ 術の勉強にもなるだろ！」なんやかんやで押し切られちゃって、死霊術は成功したんですが……その友達、防腐処理を忘れて溶けちゃいましたよ。

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【ある冒険者の失敗91】宝箱を開けると、中には薬草やポーションが入っていた。「これ、大丈夫なの？ 腐ってたりしない？」「品質を維持する魔法は生きていた。ありがたく頂戴しようか」宝箱の機能は確かに正常だった。薬草やポーションはしっかりと腐ったままの品質が保たれていた。

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【ある冒険者の失敗92】「どんな依頼も引き受ける冒険者は君か？」「おっと、話は魔物を倒してからだ！」目にも留まらぬ早業で魔物を倒すと、依頼人は呆気に取られていた。「フフン、俺の美しい剣技に見惚れたか？」依頼内容は、呪いで魔物に姿を変えられた友人を助けてほしい、というものだった。

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【ある冒険者の失敗93】魔物が王に化けているという噂の解明のため、彼らは夜の闇にまぎれて城へ侵入を果たした。王が寝ているであろう寝台を見ると……「うわっ！」「ば、化物！」そこにいたのは化物――のような醜い寝顔で寝ている王だった。「な、侵入者だ！ 衛兵！ 衛兵はおらぬか！」

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【ある冒険者の失敗94】「『窓に！ 窓に！』……この書物が失踪者の唯一の手掛かりか」「何考えてるんだか、書いてないで逃げろよ」「うちの上司も『命より真相を』って同じことやりそうだな」「ははっ違えねえ」――「任務ご苦労。ところで君達、これが音声による自動筆記用の術書だとご存知か？」

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【ある冒険者の失敗95】「お目が高い。この呪いの斧は力を奪われる代わりに破壊力を増すんだ」「貰おうか。なあに体力には自信がある」「ここで装備していくかい？」「もちろんだ。……っ!?」瞬く間に男は力尽きてしまった。「あーあ、あんたも駄目だったね」店主は斧を回収し、並べ直した。

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【ある冒険者の失敗96】「いたぞ、あの化物の目を見ると正気を失うらしい。おい奴隷、偵察だ！ 手前の頭はとっくに狂ってるからな！」「あーい♪」――「遅いぞ、さっさと報告しろ！」「無知を良いことに、これまでの私への仕打ち許し難い。報いを受けよ！」奴隷は化物の生首を一団へと突きつけた。

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【ある冒険者の失敗97】「聖職者たるもの、他者を傷つけるための武器は持ちあわせておりません」「よく冒険者やってられるな……」「心配ご無用、ご覧くださいこの筋肉！ 今や指先ひとつで竜の鱗も貫けます！」「よく聖職者やってられるな……」「実は先日破門されてしまいまして」

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【ある冒険者の失敗98】張り紙に「注意 ミミック 開けるな」と書かれている。――ある冒険者「暴露されたミミックなど剣の錆にしてくれよう」――ある冒険者「中身を盗られないようにってか？ 甘いぜ」――信じる者も疑う者もいたが、多くは『ミミック』に気を取られ通常の罠には無警戒だった。

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【ある冒険者の失敗99】「いやーそもそも冒険者になったことが失敗だったね」「それを言っちゃあおしまいよ」

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【ある冒険者の失敗100】失敗をしない冒険者などいない。大事なのは、その失敗から何を学ぶかということだ。 ～冒険記者ネウ～「そんな当たり前のこと言われても」「ギルド入って初日に言われることですよね」「もうちょっと捻った方がいいんじゃないか？」最後くらい普通に締めさせてくださいよ！

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【ある冒険者の失敗101】引き際を弁えねば中途半端な結末を迎えることを、人は知るべきである。