リスク比較によるリスクコミュニケーション - 菊池誠(kikumaco)さん、平川秀幸(hirakawah)さんを中心とする議論

7/10リスクコミュニケーション議論が7/12現在継続中、一定の広がりを見せているようなので、空気感を生かしたカオス・リミックスを試みました。コメントはtwitter上ハッシュタグ #Risk_Comm あたりでどうぞ 【先行まとめ】菊池誠(kikumaco)さんと平川秀幸(hirakawah)さんの「リスク比較」に関するやりとり           http://togetter.com/li/159792
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はじめに

本まとめは、先行する簡潔なまとめ「~のリスク比較に関するやりとり」の補足メモです。

このまとめが長すぎて読む気にならない方、それも一つの正解です。

まずは簡潔なまとめを読んで、スッキリと理解できなかった時に、
本まとめを拾い読みし、関連まとめやtwilogで関連議論を確認する等して
お役立て頂ければ幸いです。

簡潔なまとめ

まとめ 菊池誠(kikumaco)さんと平川秀幸(hirakawah)さんの「リスク比較」に関するやりとり 深夜の長いやり取りだったので分かりやすいようにまとめました。最後に平川さんの感想というかまとめの「リスク心理学」連ツイを追加しました 21026 pv 310 66 users 18

本まとめの目的

先のまとめ登場後、7/12時点で、議論当事者間に若干の齟齬が生じており

  • 「正しく怖がる」ための正しい「リスク比較」の知識普及が重要
      とする科学リテラシー/科学者 (科学的合理性の立場)

  • 人間や社会は、科学的合理性だけでなく、科学の外側の「道理性」も必要としており
      科学者は他の専門家や人々・社会と協力して問題解決に当るべき
      とする科学技術社会論/社会学者 (合理性と道理性の両立)

の議論が決着していないように見えます。

このような場合、当事者間で必要に応じ再議論するだけでなく
より広範な人々が問題意識を共有し、自ら考え議論する事も重要でしょう。

しかし先の簡潔なまとめは、当事者・関係者の共通理解事項、たとえば

  • 先行議論の参照
  • 今回議論の位置付け
  • 専門用語や専門的概念の解説
    といったものが省略されているので、単体で読んでも理解が難しいように感じます。
    (私たちの日常会話やTwitter上のつぶやき、Togetterまとめの多くがそうであるのと同様に)

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このまとめでは、今回議論の背景にある問題意識の共有を目的に

  • 関連する先行議論やまとめ
      * リスク・コミュニケーション あるいは 社会における科学の立ち位置
      * 諸々の背景にある二項対立(安全厨vs危険厨 / 御用・トンデモというレッテル貼り)と、
       その根底にある
        * ICRP2007準拠国内法制度の未整備問題
        * 広島・長崎や水俣病問題から続く諸問題
  • 同時進行したやりとり
  • その他補足情報や遊び心、空気感みたいなもの
    を収集し、extremeなremix風メモとしてまとめました。
    (twやtogでできること/できないことを見極めようという試みでもある)

でわでわ^^)

Dangerbox vs Godzilla

Bennett 4 Senate


目次

前段

  • 2011-03~06 前段1  - 正常化バイアス vs 危険バイアス の二項対立
                  二項対立の背景
                  放射線量 と リスク評価
                  3/21放射性物質大量降下のプロセス推定問題
                  6/13 東大総長への要請文
                     「東京大学環境放射線情報」Webページに関する要請
  • 2011-04~06 前段2  - 科学 と 社会 を巡る先行議論
                  6/7  「欠如モデル」
                  4/9  「正しく怖がる」
                  5/5  「リスク評価/管理 の 社会的/経済的側面 」
                  5/20 「科学だけでは答を出せない問題」
                  6/26 「震災後の正義の話をしよう」
  • 2011-07-09 前段3   - 「7/8東京大学緊急討論会」について
  • 2011-07   前段4
                  * 中川さん
                  * 山下さん
                  * 福島でなぜ内部被曝スクリーニング(WBC検査)が進まなかったか?
  • 2011-07-10 前段5   - 「7/9高木仁三郎市民科学基金の成果発表会」について

    議論1

  • 2011-07-10 未明    - 議論スタート
  • 2011-07-10 朝     - 平川さんまとめ
  • 2011-07-10 朝     - 議論への反応、その他
  • 2011-07-10 そのころ   緑のゴジラさんは…

    議論2

  • 2011-07-11 未明    - 議論は終わっていなかった…
  • 2011-07-11 明けて朝
  • 2011-07-11 昼     - 平川さん連ツイ「リスクコミュニケーション」
  • 2011-07-11 夜の部

    つづく…


前段1 - 正常化バイアス vs 危険バイアス の 二項対立議論

二項対立議論の背景

福島第一原発事故で、事故認識や緊急対応、情報公開、低線量被曝リスク評価を巡り様々な議論が発生し、問題原因追究の真摯な努力の傍らで、対立意見を類型化し二項対立の構図(御用vsアンチ御用、正常化バイアスvs危険バイアス)にあてはめようとする動きが多少見られた。

なお視野を広げれば、さらに大きな対立が複数あり、たとえば:

  • 原発推進派と脱原発派の対立
  • 今後のエネルギー政策を巡る対立
  • 事故対応や賠償の責任分担を巡る対立
    等は、国内外の原発産業/経済界/政府・行政/国民を巻き込んで大きな議論なっている。  しかし
     (1) 本まとめのテーマ「リスク比較によるリスクコミュニケーション」では必ずしも扱い切れない
        大問題であること
     (2) twitter上には、原発産業・原子力工学や政府・行政側が直接tweetする例はあまり見当たらず、
       伝聞や推測に基づく第三者のtweetがメインであること
    等の理由から、ここではあまり触れない予定。
まとめ 東日本地震と原発震災における特徴的なツイート(2011年3月) 私が注目したツイートを集めました。好きなツイート少し。キライなツイートたくさん。このまとめは両極端で構成されています。さて、どれがどっちかな。 4月分 http://togetter.com/li/120023 57622 pv 835 30 users 38
まとめ 東日本地震と原発震災における特徴的なツイート(2011年4月) 私が注目したツイートを集めました。好きなツイート少し。キライなツイートたくさん。このまとめは両極端で構成されています。さて、どれがどっちかな。 3月分 http://togetter.com/li/114428 11976 pv 81 5 users 3
まとめ まともな科学者は嫌気がさしたか 「まともな科学者」の過去ツイートいくつかを、下のまとめに収録してある。 ・3月分 http://togetter.com/li/114428 ・4月分 http://togetter.com/li/120023 ・柏汚染スポット http://togetter.com/li/124390 50138 pv 1058 250 users 21
まとめ 福島原発事故と物理学者 タイトルの通り(結論がある話ではありません) 23590 pv 304 52 users 4

放射線量 と リスク評価

ICRP2007勧告への国内法制度対応は2011/1第2回中間報告で停まっているため、3/21のICRP準拠宣言(ICRP2007準拠)と、現行法(ICRP1990準拠)の齟齬で混乱が生じている。

リスク評価をめぐり、政府・行政や一部科学者発言に対する不信の念を表明する人が相次ぎ、twitter科学クラスター周辺でも様々な意見対立が生じた。

まとめ フクシマ放射線量の評価と対応 ブログ http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-category-17.html 28863 pv 234 9 users 3
まとめ フクシマからの放射能【都内限定】 東京の放射能汚染にかかわる私の見立て http://togetter.com/li/124132 と反対意見あるいは疑惑を持つひとたちのツイートを@Mihoko_Nojiriさん周りから集めました。 30612 pv 296 6 users 3

放射能汚染のルートとタイミング

まとめ 放射能汚染のルートとタイミング 作業マップ http://goo.gl/maps/RIU1 4979 pv 53 1 user 2
まとめ 宮城北部~岩手南部の放射能汚染、山形県方向にも広がっていることが明らか(7/20公表 宮城県北部航空機モニタリング調.. 宮城県北部を中心とする航空機モニタリング調査が7/20に公表されたこと(http://t.co/bkdF8yK)により、宮城北部~岩手南部の放射能汚染が山形県方向に広がっている事が明らかになった。山形県への侵入の度合い、汚染レベルは特に山間部で不明な部分が多い。更なる調査を望む。 宮城県北部航空機モニタリングの追加資料(http://t.co/FDENegi)を見ると、宮城県気仙沼市から30k-60kのエリアが岩手県側に続いており、まだ調査がほとんどされていない陸前高田市、住田町、大船渡市の汚染状況が懸念されます。 航空機モニタリング調査の空間線量の値(http://t.co/bkdF8yK)は、自治体の計測値(http://t.co/LZn1a22)と比較して若干低いように見える。0.1-0.2μSv.. 21573 pv 150 1 user 1

3/21放射性物質大量降下のプロセス推定問題

3/21降雨に伴う関東地方への放射性物質大量降下について、放出過程や降下経緯を巡り3つの仮説がある:

  • 放射性プルーム説: 3/15大量放出(及び後の放出可能性)で、上空に放射性プルームが停留・移動し
               3/21関東上空から降雨で降下したとする仮説
               - 事故初期、状況説明を目的としたシナリオの一つとして検討された
               - しかし、3/15放出分は北西に移動し川俣町・飯舘村等に沈着した
                とする解釈が有力
               - 各地の線量分布データから、3/21大放出の可能性(次項)も推定されるが
                敷地内MPデータで確認できないから不明とする立場
               - 3月以降の小ピークを、ジェット気流の地球周回周期16日で説明する試み
                もあった
  • 3/21大量放出説: 3/21前後に大量放出があったとする仮説
               - 各地の線量分布データから大量放出の可能性が示唆された
               - その後、3/20夜~3/21未明の3号機圧力上昇との関連が指摘された
               - しかし一部ではデータ隠蔽説や再臨界疑惑へと飛躍した模様
  • 微量放出継続説:  4/12安全委発表の放出量推定(SPEEDI逆推算)に基づき、
                3/15以降も微量放出が継続し、その積算は無視できないとする説
               - 仮に3/21大量放出があっても
                * 時間解像度の荒さ (測定間隔1回/1日)や
                * 風向西風で海側に流れた割合が大きい為
                 東電MPデータ上は未検出となり得る
               - SPEEDI逆推算精度への懸念:本来の設計を外れた少数のダストサンプリング
                による逆推定の精度的疑問(時間間隔、量;公開データに誤差表記なし)

その後、ホットスポット問題等いくつかの文脈に関わる科学者から、「放射性プルーム説」の背景に「正常性バイアス」が働いているのではないか、とする(科学倫理/社会心理学的な)指摘が提出された。この問題を巡る対立は、現在下記のような理由で収束しつつあるように見える:

  • 複数の仮説の登場背景には、検証に必要となる充分な精度の実測データの不足問題がある。
      「危険バイアス」の観点で、政府・東電による重大事故隠蔽や重要データ隠蔽を仮定して、
      別の仮説の却下を試みるのは、問題のすり替え(不確定性)に過ぎない。
  • 実測された線量分布や、4/12安全委推定を基準とするかぎり、どの仮説を採用しようと放出-降下プロセスが置き換わるだけで、現在目の前にある問題に大きな差が生じるとは考えにくい。
      * ただし3/21沈着で生じた関東北部のホットスポット等、迅速な調査と対応が必要な問題もある。
      * また、4/12安全委推定はごく少数の独自計測(1日1回のダストサンプリング)に依拠しており
        他の線量分布データとの整合確認が重要
  • 従って、今後新たなデータや分析が登場しない限り仮説検証に進展は期待できない。

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各仮説の詳細

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