では説明します。100年前の心理学者たちは欲求や意志のような素朴概念が「人間の内部にあるもの」と一対一対応し,それらが行動を決定していると考えていました。しかしそれはひとつには精神分析が「本人が意識できない内的過程によって行動が決まること」を明らかにしたこと,そして(続く)
2012-04-25 08:21:28(続き)行動主義が「内的過程を仮定しなくても行動を制御できること」を明らかにしたことの2つによって否定されました。同じ時期に分析哲学が発展して「欲求や意志などの素朴概念は結果としての行動の記述にすぎないこと」を明らかにしました。(続く)
2012-04-25 08:23:42(続き)それで心理学では行動主義の時代がながく続きます。1960年代末には「実在論」の最後の牙城だった性格心理学にも「言語論的転回」が生じます。いっぽうで行動主義の時代に抑圧された「内的過程への興味」を取り戻そうとする動きが生じます。これが認知心理学運動です。(続く)
2012-04-25 08:26:34(続き)しかし認知心理学も「素朴概念を心理学の理論の中に復帰させる」ことはできなかったし,そもそもそれを目的にはしていませんでした。そこで研究されるのは「情報処理過程」なり「情動のメカニズム」なりであって「欲求」や「意志」ではありません。(続く)
2012-04-25 08:28:09(続き)ギブソンの生態心理学でも「内的」なのは「身体を軸にした知覚のシステム」ですし,進化心理学なら人の内部にあるのは「遺伝によって伝達される世代を超えた進化の情報」です。それらと「欲求」や「意志」は関係がありますが「同じもの」ではありません。(続く)。
2012-04-25 08:30:39(続き)確かに1970年代以降は心理学は一時期失われていた「内的なものへの興味」を取り戻しましたが,それは「100年前に戻った」ことではありませんし「欲求」や「意志」といった素朴概念がそのまま理論的概念として用いられる心理学への復帰が起きたわけでもありません。(以上)
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