【ある冒険者の逃走91】「今期のお知らせが更新されてないな」 「担当者が書き置き残して旅に出たんですよ。『本当の自分』とか『生きる意味』というものを探すようで」 「変なもん食ったか……? てか一人に任せてたのかよ」 「確認はしてますよ。ネタ出しは彼一人ですけど」 「そんなんでいいのか」
2024-01-06 14:25:19【ある冒険者の逃走92】「君も居残り組か?」 「お前もか。やってられねえよな。みんな薄情だ」 「各々考えた結果だ。希望に縋りたくなる気持ちも理解できる」 「そりゃ0%でない限り『可能性はある』だろうよ」 「今更どうこう言うことでもなかろう」 「だな。大人しく地球と一緒に最期を迎えるか」
2024-01-07 20:22:42【ある冒険者の逃走93】「廃村か? 荒れた様子はないが……」 「ギルドに食料の備蓄があったぞ。しばらくはここを拠点にできそうだ」 異国の来訪者である彼らは知らなかった。付近に生息する竜は一定周期で異常繁殖し、テリトリーを拡大することを。そしてそれが、まさに今このときであることを。
2024-01-08 23:51:09【ある冒険者の逃走94】(衛兵に見つかるとはツイてねぇな……) 「こんな小物も捕まえにゃならんとは面倒だな」 「誰が小物――ん? おい、アイツ宝石を盗んだぞ! 俺よりアイツ捕まえろよ!」 「お前の後でな」 「いいのか? 逃げられるぞ?」 「それはお前が盗みを働いたせいだ。お前の罪が増えたな」
2024-01-09 23:08:57【ある冒険者の逃走95】「逃げることを笑うもんでない。歴戦の冒険者も数には勝てぬよ。それがゴブリンでもオークでもな」 「アンタでも逃げる相手がいるもんかねェ」 「母には真っ先に背を向けたもんだ」 「竜を屠る大魔術師様も親には負けるか」 「さすがに100人に追われるとな」 「どんなご家庭?」
2024-01-11 21:34:38【ある冒険者の逃走96】死体1号が驚いた。表情筋が固まってるのかと思うほど常に冷静なこいつが。 「こ、これは一体?」 時間は掛かったが、この犬に目をつけたのは正解だったようだ。 「貴様に縁がありそうだったからな。連れてきた」 「お前だけでも逃げろと言ったのに……そうか、お前も死んだか」
2024-01-13 19:59:37【ある冒険者の逃走97】「魔王様、自称勇者が討伐に来たと報告が」 「また!? 俺悪いことしてないもん!」 「以前にも苦情は出してますから、事情を知らぬ異世界人かと」 「適当に追い返して。過剰防衛は駄目よ」 「やはり暴力」「お薬~」「洗脳を試したい」「拷問!」「幻覚で」 「楽しそうだねぇ」
2024-01-14 18:48:49【ある冒険者の逃走98】「レベルカンストで無双するのが楽しいんだよ」 「低レベルで頭使ったギリギリの戦いこそ最高だね」 「じゃ、このゲーム挑戦してみる?」 「ほう……なら雑魚エンカ全逃げ、ボスも仲間間引きの低レベルでクリアしてやろう」 「イベントクリアで経験値入るタイプじゃねーか!」
2024-01-16 00:35:14【ある冒険者の逃走99】生きる。それだけのために、持ちうる全ての技術を駆使した。投擲されたナイフを剣術で弾き、放射火炎は魔術で中和、煙幕で目眩まし、残像による撹乱、しかしそのいずれもすぐに無駄だと悟る。彼は生涯で初めて呪った。自身の迂闊さを。 「つまみ食いは重罪。覚悟はいい?」
2024-01-16 22:25:29【ある冒険者の逃走100】「あっ先生、逃げないでくださいよ」 「違う、これは取材なのだよ。ネタ切れゆえに!」 「山ほどの冒険譚を書けると豪語してたのは誰ですか」 「ほとんどのネタがプライバシーに配慮したらボツになったというわけさ。というわけでさらば!」 「早く帰ってきてくださいね!」
2024-01-17 22:54:50