【ある冒険者の宝物】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の宝物91】「――という特徴から、その剣は贋作なのです」 「なるほど、話は理解しました」 「よろしければ、本物を見つけ出して交換いたしますが」 「結構です。真贋関係なく、私にはこれが必要なのです」 やれやれ、隙あらば偽物とすり替えてやったのに、ああいう手合いはやりにくいね。

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【ある冒険者の宝物92】「大洪水の予知？ 船を貸してほしい？ 俺の船は大人数が乗れる造りではありませんが」 「いやなにも救助船になれってわけじゃないんだ。皆はどうなってもいいから私だけ助けてくれ」 「清々しいですね。良心の呵責はないのですか」 「そりゃ、何より大事なのは自分の命だから」

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【ある冒険者の宝物93】「日記の覗き見とはまた、いい趣味してるな」 「何を言う、これは当時の情勢を知ることができる、歴史的価値がある資料なのだよ。英雄とさえ呼ばれた冒険者の日記、是が非でも公表すべきだとも」 「それ、衆目に晒されると炎上する術罠が仕掛けてあるぞ」 「む、用心深いな」

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【ある冒険者の宝物94】「これは魔除けの鈴。邪なる存在を退けてくれる」 「そりゃ便利だな」 「しかし鈴の音色に釣られ賊が襲ってくる」 「人間には効かないのか」 「そこで人除けの鈴。心を鎮める効果がある」 「抜かり無い」 「だが鈴の音色に釣られ邪なる存在が――」 「わかった、わかったから」

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【ある冒険者の宝物95】「父さん、怪我はない!?」 「ああ……しかし金目の物は盗まれてしまったな」 「あの『国を滅ぼす魔術書』も!? 大変だ！」 「もう種を明かすが、あれはただの紙束だ」 「え？」 「俺は本気を出せばいつでも国を滅ぼせるんだ、と思うことで心を落ち着かせる御守りみたいなものさ」

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【ある冒険者の宝物96】「本当に消すのかい？」 「そのほうが後腐れなくて清々する」 「長年付き合ってようやくこいつの本性が解ったぜ」 「後で悔やんでも……ま、いいか」 数日後、記憶を消した二人はまた手を組んだ。これで三度目。全く、大事なものを簡単に捨てるような奴らだからこうなるのだ。

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【ある冒険者の宝物97】「俺の代わりにお宝を手に入れてくれてありがとよ。さ、それを寄越しな。こいつの命が惜しければな」 「そこまで堕ちたか貴様……！」 「人質、確かに有効な手段ですよね。ところで貴方の大事な大事な弟さん、とても可愛いですね」 「て、てめえ……！」 （こいつも外道だわ）

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【ある冒険者の宝物98】「惑星の踏査は初の試みだ。皆、覚悟は出来ていると思うが……」 「心配性ですね隊長。僕、娘から貰った御守りあるんですよ」 「この婚約指輪、帰ったら結婚指輪になるんです」 「今日は俺の誕生日だ、帰還したらとっておきの酒を開けようぜ」 「何故嫌な予感がするのだろう？」

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【ある冒険者の宝物99】「夢だったんだよね、自分の酒場を開くのが」 「一階が酒場兼食堂、二階は宿にもなっているのか。立派なもんだ」 「しかも町の入り口だから、宣伝要らずで客も入ってきそうだね」 「それで、あなたの冒険はこれで終わりですか」 「いやいや、これからが新しい冒険の始まりだよ」

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【ある冒険者の宝物100】「この書物は処分するの？」 「待った待った、それは一番大事なものじゃないか」 「そんなに大事ならきちんと整理しときなよ。何が書いてあるんだか」 「これはね、冒険者たちの記録だよ。実際に見たものから噂話で聞いたものまで、いろいろとね。これからもっと増えるかも」